培養X年目の与太話

培養、与太話

細胞培養と与太話で生きてます。

「カウンター精神は文化の素」が分かる書籍 5選

最近は巣ごもりの状況もあってか、

本を読むこと、モノ思いに更けてる時間が多いんですよ。

 

んで、これまで読んで

(こりゃぁ面白い!)

となった本がラックに溜まるにつれ、

海外や日本文化が生まれた経緯についての本が多いと気づき。

 

先にまとめてしまうと、「文化が出来上がる」のバックグラウンドには、

その時代を生きた人間達が、時代に対する不満・カウンター精神を土台に

現状を変えようとした足掻きの積み重ねだと分かったんです。

カウンター精神は文化の素ってことですね。

 

 

以下では、個人的に面白かった書籍を5冊紹介します。

 

 

 

 

 

1.戦いの音楽史 逆境を越え 世界を制した 20世紀ポップスの物語

普段から色々な音楽には触れてはきたと自負してるんですが、

音楽の書籍に触れたことは無かったんですよね。

そういう意味で新鮮な本でした。

書籍名にもあるように、現在のJ-POP、ロック、ヒップホップなど

現代のポップミュージックが確立されてきた歴史的経緯を

人間の「戦い」の視点から紐解きます。

 

内容は1890年代まで遡り、

世の中に蔓延る人種差別、ステレオタイプ、流行、商業主義、貧富の格差に対する

カウンター精神を音楽として表現し続けたミュージシャンの歴史が綴られてます。

 

加えて、音楽が多くの人間に広まっていくためには

一定以上の商業的な成功が必要であることも触れている点も面白いですね。

文化である以上、一定数以上の人々の間で共有され消費される必要もある。

ただ、商業的な成功だけがミュージシャンや大衆にとっての文化足り得るかというと、

必ずしもそうでも無いぜってところが難しい。

 

これは来年くらいにまた読み返したいです。

 

 

2.さよなら未来――エディターズ・クロニクル 2010-2017

これは本当に好きな本でして、飽きずに繰り返し読んでます。

Wired Japanの元編集長だった若林恵さんが著者ですね。

 

世に広まる「イノベーション」こそ正義みたいな未来志向に対し、

そもそもそれって何で必要なの?の視点から

テクノロジー、サイエンス、音楽、ファッション、地域おこしなど

様々な分野を鋭く切り裂く文章がたまらなく好きなんです。

文章の書き方や考え方には、買った当初から

(そうそう、こういう考えに触れたかったんだよ)

と感じてまして。

 

著者の批評の姿勢は「物事を原理的に捉える」で一貫していて、

どんなことでも「そもそも何の意味があるのか?」と混ぜ返してみせる。

でも、その思索の果てには人間が実はどうしようも無いほどに何かに依存したり、

思考停止の状態で生きている事実が浮き彫りにされる。

もう少し考えてみようぜ現代人、ってメッセージを感じる本です。

 

でも、正直なところ読んでも一発で理解出来るかっていうとNoなんですよね。

理解したい、納得したいが故に何度も読み返すって感じの本です。

反芻して、その度で自分の中で解釈を洗練、言語化していくのも読書の楽しみ方かなと。

 

 

3.OTAKUエリート 2020年にはアキバカルチャーが世界のビジネス常識になる

これは古くからの馴染みの人の著書です。

著者自身もオタクであり、海外での学生生活で得た経験から

世界のエリート層がオタク文化に触れまくっている事実、

そしてそれが今後の世界情勢にどのように影響を及ぼしていくか、

次世代を生きるうえでのオタク文化の意義とは、

を説明しています。

 

オタク文化も前出の音楽と同じように、

文化として定着した背景にはインターネットを媒体とした

カウンター精神の積み重ねがあったと読み取れました。

具体的には度重なるネットの検閲、地域の宗教的思想、

ネット世代へのステレオタイプからくる抑圧に人々が反抗した歴史だとわかります。

 

そして、カウンター精神から始まった一連のムーブメントは、

いつのまにやら「他者とこの面白さを共有したい!」の

ポジティブな精神に取って代わり

コンテンツ共有によるオタク文化の創出が加速されていく。

 

ネガティブ要素もポジティブ要素も、どちらもが文化を創っていく礎になるのだと

考えさせられた1冊ですね。

 

 

4.バイオパンク ―DIY科学者たちのDNAハック!

 

音楽とオタク文化ときて、次はバイオ技術

自分で家具や電子機器を自作する活動を「DIY」と呼ばれて久しいなか、

この本ではバイオテクノロジーすらDIY

完結させる試み「DIYバイオ」が説明されている。

 

DIYバイオ潮流の背景には、某大企業が遺伝子組み換え作物の種子を使って

独占的に利益を上げ、様々な人間の利害関係が絡んだ事件が起きたことだった。

その事例から、海外のあるコミュニティは

バイオ技術(特に遺伝子配列を読んだり改変する技術を指す)を

大企業のラボだけに留めるのは真の意味で社会が恩恵を受けられないと考え、

大衆にでも再現し易い形に手法を一般化、簡略化しようとなったらしい。

この動きはバイオハックと呼称され、今でも世界的に進められている。

 

この潮流は遺伝子実験を簡便に行うツール開発を後押しした一方で、

バイオ技術の危険性や安全対策のリテラシーを十分に持たない大衆が

使用するのは適切なのか?と議論を起こすことになる。

 

何か1つのムーブメントが起きるにも、良い点悪い点の両方が存在する。

悪い点は議論が特に活発になり易く、各国の規制整備を推進する力にもなる。

何にしても、大衆の影響力も馬鹿にならない、と思わせてくれる1冊ですね。

 

 

5.ランウェイで笑って

最後がファッションについても触れようかなと。

ファッションといっても、ユニクロとかGUとかのファストファッションではなく、

最先端を意味する「モード」服をテーマにした漫画です。

服のデザインも何度も流行が移り変わったり、はたまた時代を逆行したりします。

基本的にそれらの動きは、デザイナー達がその時代にフィットする哲学をどうやって服の形や模様、素材に落とし込むかの戦いだと教えてくれます。

そして、モードは徐々に裾野が広まっていき、

やがては大衆のファッションに影響して生活や行動を変えていく。

 

イラストの線が細くて美麗なのも個人的には◎です。

最終巻が2021年8月に発売されるとあって、最後まで楽しもうと思う

今日このごろです。