培養X年目の与太話

培養、与太話

細胞培養と与太話で生きてます。

バカサンダーとバレンタイン

彼女がバレンタインデーのチョコレートをくれるという。

いくつか案を提示された。

有名店の、いかにもバレンタイン用のチョコ

もう一案が「巨大なブラックサンダー

 

巨大なブラックサンダーなんて飛び道具だされたら

小綺麗なチョコなんて霞んでしまうだろ。

PIERRE MARCOLINIでさえだ。

面白そう、それ以上のことは考えずブラックサンダーをリクエストした。

世間一般ではブラックサンダーを義理チョコの筆頭あげる声が多いわけだけど、

それが巨大になれば、当然材料も手間もかかるわけだし

有名店の高級チョコよりも渡す意味は大きいだろう。

 

平日につくるのは骨が折れるというので、チョコをくれたのはバレンタイン数日前の休日だった。

家で作っているところを眺めていると、菓子作り用板チョコ数枚、ビスケット1袋が見えた。

てっきりブラックサンダーを大量に買ってきて、溶かしてまた固めて錬成すると思っていたけど。

たしかにビスケットが入っていたなと思いつつ数時間のうちに完成した。

でかい。あと岩並に硬い。冷蔵庫から取り出したばかりだからか。

 

 

ふたりしてナイフで力任せに割りながら食べた。

味はしっかりブラックサンダー。うまい。

巨大でバカな印象からバカサンダーと名付けた。

 

そういえば中学生のころ、ブラックサンダーにハマっていた時期がある。

自宅マンションのすぐ近くに100円ショップがあって、

そこだとコンビニよりも安く変えたのだ。4個で100円で、

中学生の激寒財布でも買えたんだ。

友人宅にお邪魔する時いつも買って行った。

いつの日か、大人買いして飽きるまで食べてやろうと思っていたが、

まさかのバレンタインに夢が叶ってしまった。

しかし文字通り、すぐに食べれるキャパを超えてしまい

結局二人で5日かけて食べきった。

 

彼女と過ごしていると度々こういった巨大な食べ物が出現する。

ついこの前も巨大な茶碗蒸しをリクエストされて作ったし。

だがこれだ。こういうのが良いんだ。

自分が安らぎを感じる瞬間はこういった下らないけどやってみたいことが実現したときだ。

良い彼女だ。

 

さて、ここで重要なのはホワイトデーのお返しだろう。

何が良いか聞いてみたら

「これが良い」

便通を良くする紅茶か。

君が良いと言うのであれば、それにしよう。

 

細胞農業のなかのコスメ どう語ろう?

 

1/19コスメ展示会@東京ビッグサイトに参加した。

学びの機会を与えて貰ったことには感謝だ。

目的は自社のオリジナル原料 CELLAMENTの顧客開拓だった。

 

研究開発現場として展示ブースのヘルプをしに行ったわけだけど、

ブースに来る人が何に興味をもって来るのか?

ウチの製品をどう語ろう?と好奇心が先にあった。

なにしろ入社して5年以上経つのに、コスメ分野にほとんど触れてこなかった。

 

普段はデータを積み上げて理論的、客観的であることに徹しているつもりだが、

コスメって必ずしもそうでない印象がある。

なんだか普段のやり方が通用する気もしない。

来場者は研究系よりも商品企画やマーケティング系の人が多いと聞いていたし、

実際そうだった。

事前に配布資料を読んだり、これまでの製品HPを見たりして

「こういった表現で訴求しているのか」と把握しつつも、

コスメ分野らしいトンマナ、研究現場の人間としてどう語るか?

は当日までボンヤリしたままだった。

(例えば、よく聞くシズル感ってホントなんなんだ?)

 

 

当日のブースの対応は来訪者の反応を探りつつだったわけだが

対話のなかで感じたことがある。

  • 自社製品を知っている人は意外と少ない(社名だけ知っている人は多かった。あれだけ膨大な数の展示があるのだし、無理も無いが。)
  • ブースの「細胞農業」が気になって来た人が多かった

そういう来訪者からすれば、

「細胞の農業ってなに?コスメとなんの関係があんの?」

「おたくって培養肉の会社じゃなかったっけ?」

となるはずだ。そういう質問はあったし。

すると、セラメントの実績、強み、効果効能と同じくらい

「なぜ、ウチがコスメをやるのか?」言い換えれば

「ウチが細胞農業の一貫でコスメをやる意味って?」

の説明が要る。

一瞬答えに窮したが、これまでの考察をもとに答えることにした。

 

ウチは細胞培養によるモノづくり『細胞農業』の普及を目指すベンチャーで、食肉生産の実現を目指している。

大規模に食肉を生産するため、どうやって細胞を若々しく保つか?が重要になると考え研究開発をしてきた。その過程で見つけたのが原料の細胞だった。

若々しくする機能がコスメ原料に合致すると考えたのをキッカケにセラメントを開発した。

細胞農業でのモノづくりがサービスや事業に繋がることを世間に示す意味もあった。

 

 

もっと良い説明があったかもしれない。

他にも考えさせられた質問に

「なぜこの細胞を使うのか?他の上清液の細胞との違いは何か?」があった。

科学的なエビデンスを聞きたい意図があったのだろうが、

原料細胞をどんなイメージで捉えたら良いのか?という意味にも聞こえた。

 

多くの上清液はヒトの大人由来の細胞から作出される。

それに対し、ウチの原料細胞は胎児期の卵からのみ回収できる細胞。

大人とは違い、若いとき特有の機能をもった細胞が取れる

事実以上でもそれ以下でもない。

 

昼休憩中、会場内をふらついていたらあるブースで

ヒト毛根細胞順化培養液なるものを見かけた。ヘアケア向けの原料らしい。

毛根細胞を強調すれば毛に効果があるイメージを想起しやすいってことなのか?

その他にも、細胞名や関連されるイメージを強調したブースは多かった。

どんな訪問者も、初見で科学的なエビデンスを吟味する人は少ないのかもしれない。

となると、細胞そのもののイメージを端的に訴求する必要があるってこと?

細胞のブランディング???

乳酸菌飲料に使われる菌(iMuseとか)みたいなやつ?

 

 

振り返れば、訪問者からの反応は考察ポイントが富んでいた。

どうやら細胞農業は、コスメの世界観として一定の機能を果たしているらしい。

細胞農業がフックになって訪問者は「なぜ細胞農業でコスメ?」

「培養肉とどう関連するの?」となる。

そこを説明で解消してあげ、

  • 培養肉の研究過程でしか生まれ得なかったこと
  • 根幹には新しい細胞培養技術があること
  • 今後、ものづくりとして広がりが期待できること

に納得感を得てもらう。

 

うまく説明できれば訪問者は、

理解できるけど少し意外!もっと知りたい!

となるのかも。

 

もちろん、その後の商談・採用に繋がるかは別なのだが、

他社に無いコンセプトで開発している点には納得頂いた様子だった。

会場を歩いて実感したけど、世間は似た商品で溢れかえっているし、

各社が手を変え品を変え魅力をアピールしている。

競合が多いのは当たり前だが、現場であれ程のリアルを見せつけられると

強く意識せざるえない。

 

ところで、原料を探しにきた開発担当者はきっと似た悩みを持つはずだ。

 

で、結局のところ、どの原料が魅力的だったっけ??

 

自社原料が業界初の特異的な機能や効能をもっていたとしても、

似たりよったりな製品があるのは事実だ。

少し歩くだけでも、培養上清原料を配合した製品は10個以上見つかった。

来訪者に自社製品を科学的エビデンスをもとに他社と比較してもらい、

吟味して貰う負荷を強いるのは間違いなのだろう。

それに、コスメ製品は薬機法の都合もあって効果を明確に謳いずらい。

だからこそ、多くの製品にはブランディングやイメージが先行すると分かった。

 

原料に含まれるタンパク因子の濃度で競り合ってもキリが無いし、

別の視点の提案が必要になる。

細胞農業はその点では確かに強い要素だし、

食肉が実現すればコスメのストーリーにも何かしら作用するだろう。

 

 

撤収後の打ち上げの席で聞いた言葉が印象的だった。

「コスメはサインエンスであると同時にアート」

そうかもしれない。

業界的なブランディング理論はあれども、

どこか掴みどころの無い、実態の曖昧な要素がある。

そんな気はした。

 

普段の業務では実験からエビデンスを積み上げて、

その先の客観的な納得感が目的になりやすい。

だけど、コスメ分野ではそれと同じくらい数値化できない

主観的な納得感に重きがおかれる。

これは何というか、好きなミュージシャンを見ている感覚に近い。

魅力をうまく言葉にできずとも、惹かれる人は必ずいる。

とはいえ、魅力的であるってことは少なくとも

ファンである自分にとって納得感につながる一貫された創作の姿勢があるはずだ。

 

勉強になった!!

お疲れ様でした!!!

『たらみ ナタデココヨーグルトデザート』を求めて

 

 

「たらみのどっさり ナタデココ ヨーグルトデザート」が好きだ。

2年前にこの商品を認知してから、ずっと食べている。

ヨーグルト風味の爽やかさも良いし、

何よりもたらみはナタデココの美味い食べ方を追求していると感じた。

ネットで買うと割高になるから近くの大型スーパーで買ってる。

よく買う所だとサミットだ。

初夏~秋にかけて5割引くらいで大量に売り出される。

時季限定のたらみの戦略なのかは知らないが、

本当にこれで良いのかと思ってしまうほどの安さだ。

 

しかし、ある時を境にパタっと売り場から消えてしまった。

あれほど食生活に定着していた蜜月が呆気なく終わり、なんか虚しかった。

別のゼリーにも手を出してみたのだが、やっぱりヨーグルトゼリーが一番だった。

 

そんなとき、仕事からの帰路でOKストアに立ち寄った。

まったく期待せずに夕飯の買い出しをしたのだが、

レジ近くの棚の前を通りかかった時に驚いた。

安く大量に売られている。税抜き98円だった。

堪らず6個買った。

本当は箱で買いたいが、そういう形態では売ってない。

 

冬の間も安く手に入るのだろうか?

もはや毎日食べれるなら悪魔に魂を売っても良い。

そんな食い物に出会えたことに感謝をたらみへ。

どこか気が進まない

職場のミーティングで話題にあがったこと

「食品生産の現場にもSDGsの考え方を適用しなくてはならないのだけど。。。」

食品業界でキャリアを積んだ長老メンバーが言った。

環境負荷を下げなくては。話の背景にはそれがあるらしい。

が、どこか煮えきらない様子だった。

それは自分も同様なのだが。

 

またここでもSDGsか、と思ったのは置いておいて

本当に気になったのはこの後だ。

長老の話は以下のぐあいだ。

 

  • 国、業界を問わず、SDGsの考え方を導入する流れがある。
  • 事業プロセスでの環境負荷に目を向けなくてはならない。
  • カーボンニュートラルの実現に向けた努力が求められているなか、製造メーカー各社もCO2ガス排出量に高めの達成目標を設定している
  • しかし、多くの企業が対策を講じているものの、どう考えても目標を達成することは不可能であるとの空気がある
  • 企業だけでの努力では達成は不可能で、発電システムを自然エネルギーに転換していくといった、社会インフラの変化も無いと厳しい。
  • 単純にCO2排出量を下げる方法として、カーボンニュートラルに配慮した電気を購入することもできるが、製品の製造コストが高くなる。
  • 海外では環境負荷を下げる取り組み成果を企業が公開する動きもあり、投資家からの出資判断にも影響するらしい。
  • 世間の流れとはいえ、モノづくりの現場には厳しい。困ったものだ。

 

人間や動物が住めなくなる地球にするのは良くない。それは分かる。

ただ、とはいえ、一連の話には違和感を感じざる得ない。

正確に言語化できないが、どこか意味も意義も無く振り回されている気がする。

そして、その企業を振り回しているものを突き詰めれば、

結局は未来へのリスクや経済優位性だ。

 

ウチもまだ若いベンチャーだ。投資を受けられないのは困る。

とはいえ、カーボンニュートラルに力を注いだとしても

製造コストが上がって事業の現実味が損なわれるのも苦しい。

食品業界のように低い原価と低価格を求めるタイプの業界にとっては尚更だろう。

何より、本当に不幸だと感じたのは、社内でも社外でも、

周囲の人間の多くがカーボンニュートラルをはじめとする

環境問題を自分事として認識できていないことだった。

言い換えれば、自発的にやるのではなく、

みんな「世間が求めるから、何となく」という態度だ。

ではこの「世間」とは誰のことだろう?

遠いところだと「国」「国連」、近いところだと「協業他社」「投資家」がいる。

ただ、見方を変えれば、その協業他社や投資家も世間の流れに乗っているのに過ぎない場合もあるだろう。

 

ここ20年くらいで騒がれている気候変動が本当に

CO2排出によるものなのかも確定的でない。

CO2濃度と気温上昇がデータ上は相関しているのは事実としても、

本当に世間全体で騒ぐべき論点がソコなのかは誰も知らない。

厳密に答えるのであれば地球と全く同じ惑星を探して、

文明が発展しなかった場合の大気中CO2濃度をモニタリングすれば良いが、無理だ。

もっといえば、様々な対策を講じたとしても、

数十年後に世界環境が改善されているとは限らない。

もしかしたら一連の心配事は人間活動とは関係の無い、

地球の周期的な変動によるものかもしれない。

数十年振り回された挙げ句、「あの努力は何だったんだ?」なんてことも有り得る。

 

本当にそれが未来の自分たちに降りかかる問題なのかどうかは別として、

リスクが金を回していくのだろうか?

 

あーーモヤモヤする。

培養の「当たり前」に目を向ける

                                            

 

仕事で毎日のように培養液を使っている。

培養液とは動物細胞を生かしたり増やしたりするための液体で、培地とも呼ばれる。

ラボでは超がつくほどの消耗品だから、大抵は薬品用の冷蔵庫に入っている。

実験者は使う時に冷蔵庫から取るだけで良い。

ありふれたモノだからか、培養液の中身の成分に意識を向ける機会は少ない。

 

以前、とある仕事で培養液を試作することがあった。

市販で売られている培地の中には、動物由来の原料を極力減らすために

栄養素が豊富に含まれるものがある。

有名どころだと、DMEM/Ham's-F12がある。

あのiPS細胞の専用培養液も同じような成分が入っている。

 

そんな時期に昼ごはんにBase Foodを食べていた。

食べながらパッケージ裏の成分組成を眺めていたら

中身が培養液の成分組成に(完全でないが)かなり似ていることに気がついた。

もっといえば、スーパーマーケットで売っているサプリメント

似たような栄養で構成されている商品が多い。

basefood.co.jp

 

考えてみれば当たり前だ。

人体は細胞で構成されている。

その人体が1日で必要な栄養素が決められているのであれば、

細胞レベルで見ても必要な栄養素が決まっているはずだ。

しかも、栄養の種類はある程度は多ければ多いほど良いのも自然な話だ。

 

もともと培養液は、細胞を体外で生かすため、

体液成分を再現するところから着想を得ている。

体液成分を完全体とするならば、

それは限りなく栄養成分を入れたモノだと考えるのも自然な流れかもしれない。

 

そんな当たり前のことに今更気づいたんですね

寝よう