培養X年目の与太話

培養、与太話

細胞培養と与太話で生きてます。

科学技術・研究

どこか気が進まない

職場のミーティングで話題にあがったこと 「食品生産の現場にもSDGsの考え方を適用しなくてはならないのだけど。。。」 食品業界でキャリアを積んだ長老メンバーが言った。 環境負荷を下げなくては。話の背景にはそれがあるらしい。 が、どこか煮えきらない…

培養の「当たり前」に目を向ける

仕事で毎日のように培養液を使っている。 培養液とは動物細胞を生かしたり増やしたりするための液体で、培地とも呼ばれる。 ラボでは超がつくほどの消耗品だから、大抵は薬品用の冷蔵庫に入っている。 実験者は使う時に冷蔵庫から取るだけで良い。 ありふれ…

実験機器を導入しても業務は効率化されない・・・・なぜか?

現場での機器運用に携わっている身分として、感じたことを書きました。 【こんな人に向けて書きました】 仕事でラボ運用をしている人、しようとしている人 開発現場で新しい機器を導入を検討している人 ラボでの作業効率を向上させたい人 はじめに 研究開発…

海が巨大な生き物に見えた

去年11月に引っ越してから、家から海への距離がグッと近くなった。 気が向いたときは自転車を走らせて浜辺を散歩したりしている。 冬でも浜辺まで行けばうっすらと潮の香りがする。 でも、あの潮の香りってなんだろう? 今まではミネラル分が鼻に着くのかと…

蛍雪の功を再解釈しよう

つい数日前、関東の大雪で久々に積雪を見た。 夜に職場を出て、所々積もっているなかで自転車を走らせて帰ったのだけど、 夜にも関わらず外が明るくて驚いた。 道脇に積もった雪に街頭の光が反射しているようで、 日も暮れたのに夕方並に明るく感じた。 そん…

バイオリアクターの仕事に転身した話

※画像はイメージ この10月から生産現場の仕事に異動した。 個人的には前向きな異動だった。 これまでラボの中で通常の培養しかやったことが無かったから、 大きな培養タンクを使ってるからして見える景色が全然違う。 今まで以上に培養エンジニアらしい経験…

人型でもない無生物に家事をして貰いたい

シンプルに家事が面倒くさい時がある。 そんな時、家事を代行してくれる存在がいると有り難い。 でも、見ず知らずの人間と空間でご一緒するのは気が引ける。 それに、そんな金も無い。 じゃあ、ロボットがいたらどうだろう? これならあまり気も使わずにいれ…

数学の興味深いところ書こう

学生を卒業してから4年近く経つけど、 今更ながら数学って大事だし面白い学問だなと思ってる。 というのも、職場に数学に強い人間がいて、 その人と話すうちに面白さに気づくことが増えた。 彼は自分が知る限りで一番数学に造詣が深い。あと6つ年下。 頻繁に…

実務的な細胞の扱い方 ~株化細胞と初代細胞~

今回はバイオ技術っぽいこと意識して書くぞ。 バイオ専門外の人と出くわすと高確率で聞かれる話 『実際、実験に使ってる細胞って何の細胞なの?』って話 初めて質問されたとき、凄いざっくばらんな振り方をされるもんだから コチラも答えに窮したのだけど、…

テクノロジーの社会実装の前提にあるもの

前に不老不死技術に触れた話を書いた。 技術がそこにあれど、結局それの行使を選択するか否かは 個人の信条により選択されるらしい。 sciencecontents.hatenablog.com そんなことをツイッターでつぶやいた時、 あるフォロワーさんから気になる意見を頂いた。…

死生観も色々

多種多様な文脈で、死生観が提示されている。 どれが悪いとかではなく、どれも良い。 ただ、何を基準に選べば良いのか? つい先日、数カ月ぶりに実家に戻った。 母親と雑談をしたいた時、祖父の話になった。 母親いわく 「おじいちゃんがもう80後半だから、 …

技術の社会実装も結局は金だと思った話

培養技術ベンチャーに努めて3年目になろうとしている。 相変わらず研究開発の現場にいるのだが、 最近は金の計算をすることが増えている。 人件費、研究開発過程で使う資材費、資料作成費 etc.... 社外へ共同研究の提案をしたりするのが理由だ。 社外に何か…

将来的な「食っていける」の話

「それでは食っていけない」 ベンチャーを含め、自由な生き方や働き方をする人がまわりに多いせいか、度々そんな言葉に出くわす。 「食っていけない」 確かに問題だ。 食えないと生理的にダーメージが来る。 生き永らえることはできないだろう。 頼りにでき…

【痕跡1】天然バクテリアから作られたシューケア製品

私的な趣味として、培養に絡む製品を生物の力を使った「痕跡」として集めている。 微生物の力を使ったものとか。 ヨーグルトとか漬物とか食品に限らず、様々な生活用品に使われているものも出てきて面白い。 つい先日雑誌で見かけて買ったのは、微生物の力を…

技術だけだとピースが欠ける

実家に帰省した時のこと。 実家でくつろぎながら親と時事ネタを話した。 その中で出てきた「卵子再生技術の開発」で面白い議論になった。 健康な卵子が再生できれば不妊治療に役立つ。 早い話、何歳でも子供を授かることができる。 高齢出産が多くなり、見た…

「培養肉食べてみたいが3割」問題のややこしさ

※以下の内容はあくまでも個人的な意見です。 つい先週、こんな記事を見た。 www.nikkei.com 以前から日清食品は東大との共同研究を皮切りに培養食肉の開発に着手していた。 細胞農業と言われるこの領域の企業のほとんどが海外企業、スタートアップである中、…

有難いモノの話

本日、ちょっとしたミスをして気付きを得た。 備忘録までに。 夜に飲み会に誘われていた。 上司から交流のある企業さんと飲むから合流しないかとのことだ。 実験が立て込んだことで同時には出発できず、一人作業を済ませてから向かった。 オフィスから駅まで…

生体組織工学のモヤモヤを聞いて欲しい ~肉づくりの観点から~

既存の組織工学に対してモヤモヤしてきた。と言えば唐突だが、実際そうだ。 「培養皿の中で組織を作る」研究はかれこれ20年以上前から行われている。 iPS細胞から連想されるように、世界的にも再生医療の流行り(?)の影響を受け、 研究者はこの10年間で急…

CG制作は使用時のことを考えてから・・・。 ~科研費申請編~

先週の事です。 僕はとある方から科研費申請の書類に載せる図画を描いてほしいと言われ、いつものようにCG制作をやっていました。 色々と手の込んだのを作ったのですが、後で言われて思い出したのは 「最終的な科研費申請書類は白黒書類になる」 ということ…

多孔質フィルムを作製するBreath Figure法

ホントに久しぶりの投稿になってしまいました。 最近、研究をしていて面白い実験手法が発表されていたので書いてみます。 突然ですが、「多孔質フィルム」と聞いてイメージは湧くでしょうか? 下の画像のような、細かな穴が無数に空いた構造のフィルムです。…