培養X年目の与太話

培養、与太話

細胞培養と与太話で生きてます。

バイオリアクターの仕事に転身した話

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※画像はイメージ

 

 

この10月から生産現場の仕事に異動した。

個人的には前向きな異動だった。

 

これまでラボの中で通常の培養しかやったことが無かったから、

大きな培養タンクを使ってるからして見える景色が全然違う。

今まで以上に培養エンジニアらしい経験とスキルが

身につくのだろうかと期待して仕事をしている。

 

異動した直後、機械や部品のことなんか無知なわけだから

"This is a tube." から入りつつ部品や機構の勉強をしたり、

現場の掃除の仕方を覚えたりとインプットが多い。

 

生産現場に近い場所で手を動かすと培養肉含めた培養技術の普及について

現実的な課題に触れることが増える。

例え理論的なコストが下がったとしても、

実際に作業がしにくい工程になると実装の妨げになる。

培養液の交換頻度が高過ぎてもユーザーの作業感を下げることになる。

当然、一般家庭に培養技術を普及させることも難しい。

人間的な動きや生活に一歩近づいた目線で過ごしている。

職場が変われば目線も変わる。

 

この経験を通して、創作のインスピレーションになると嬉しい。

個人的なこの世の七不思議

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毎日を生きてると不思議なことがある。

七不思議っていうんでしょうか。

 

1.何だコイツ?って思うやつほど結婚してる

これホント何なんですかね?

良い奴と思った人間ほど孤独だったり、

明らかに人間的に嫌なやつほど結婚してたりする。

ただ良い人は結婚できないって頻繁に耳にしますが、そういうことなんでしょうか。

 

 

2.時間容量上限になるまで仕事は増幅する

これは仕事あるあるですね。

あるプロジェクトを任されたりする。

スケジュールに余裕をもって進めていたと思いきや、

当初の予定には無かった想定外の対応で時間が費やすことになる。

結果的に納期一杯まで時間がかかったり。

初めから分かっていれば良いものの。

 

 

3.ロジカルと建前は言いつつ、感情でねじ伏せてくる奴

これは上司または先輩あるあるなのでは。

ロジカルに考えろって理性的な言葉に聞こえますが、

それを言われた方は感情的に捻じ伏せられてることありますよね。

その場じゃ何も言い返せなくなって、しぶしぶ言いなりになったりとか。

コミュニケーションの行き着く先はロジックよりも感情なんですかね。

 

 

4.実直なやつが見下される

実直で素直に生きてる奴は好かれはするものの、

器用に生きて行けるとは限らないって話ですね。

どっちかといえば声のデカイヤツの方が上手くやってたりする。

真面目に向き合う部分は選んだ方が良いってことなんですかね。

 

 

5.他人と感情は共有できない

同じことを言われたり、同じ体験をした時に

どう思うか

どう反応するか

どう行動するか

は人によって違いますよね。

同じ感情を共有できれば良いのにって思うこと、結構あります。

同じ感情だとしても、それをどう表現するかも違いますよね。

悲しみであっても、ある人は分かりやすく泣く場合もあるけど、

ある人は微笑していたりする。

 

 

6.社会人の多用語句「ちょっと」

他人の言動を見てて思いました。

社会人というか大人が異常に多用するワード

文脈的に使うのが不適と思える場面でも使う。

枕詞のように使う。特に理由はないけど

 

 

7.イノベーションうるせぇ

ベンチャーで仕事していると特に感じるんですが、

社内外含めて猫も杓子もイノベーションを求めたがる。

具体的に聞いてみると、大して真剣に考えてない場合もあるんだけど。

イノベーションはあくまでも結果論であって、

その過程にある仕事なんて地味の極地なんですけどね。

何か新しいものを探しに行く姿勢でいる人が多い気がするけど、

それよりも本来なら持っていた能力や生き方、

発想を取り戻しにいく姿勢の方が理にかなっているんでは。

人型でもない無生物に家事をして貰いたい

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シンプルに家事が面倒くさい時がある。

そんな時、家事を代行してくれる存在がいると有り難い。

でも、見ず知らずの人間と空間でご一緒するのは気が引ける。

それに、そんな金も無い。

 

じゃあ、ロボットがいたらどうだろう?

これならあまり気も使わずにいれる。

ここで肝心なのは、あまり人らしくないロボットであることだ。

人らし過ぎると変に愛着が湧いて、人間同様、気を使うことになる。

だから、人型でない方が良い。

なんなら音声を発しない方が尚良い。

そう考えたら、最適解はルンバじゃない?

そうやってルンバは創られ、世に出たのだろうか?

数学の興味深いところ書こう

 

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学生を卒業してから4年近く経つけど、

今更ながら数学って大事だし面白い学問だなと思ってる。


というのも、職場に数学に強い人間がいて、

その人と話すうちに面白さに気づくことが増えた。

彼は自分が知る限りで一番数学に造詣が深い。あと6つ年下。

頻繁に彼からモノの考え方を教えて貰うのだけど、

知れば知るほど数学って計算のための学問じゃないと気付く。

あれは考え方を開発する学問だ。

そして、それを紐解くにつれて、

数学の更に根っこ部分は哲学や論理学に行き着くとも気付く。

 

でも実際そうだ。

大昔のギリシャで数学の基礎を築いた学者たちも、

哲学者を兼ねていたりする事例は多い。

むしろ、数学は哲学をバックグラウンドにして発展してきた。

哲学も物事の考え方を突き詰める学問だし。

 

大学の理系学部に入学した当時、生協書店にあった

群論(大学数学の初歩らしい)の参考書を手にとって驚いたのを憶えている。

テキスト内に数字が見当たらない。

数字をひたすら探したが、ほとんど見つからなかった。

経済新聞を初めて読んだとき、4コママンガを探した時の感覚だった。

 

数学に触れると体系的な論理で議論する姿勢が求められる。

体系的とは、より広い事象で通用する大きな前提、理論からスタートして、

どんどん具体的な話に落とし込んでいく。

どんな学問でも基本姿勢は同じだけど、数学は特にそうだと思う。

んで、その時にマジで重要なのは、

論理を構築するうえでどんな前提条件を置くか、

言語をどう定義するか?だったりする。

これ、学問に限らず、普段の仕事の議論でも全く同じだったりする。

 

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特に「1+1=2」証明するための前提条件、

ペアノの公理』の考え方は興味深かった。

前提条件はどこまでも言葉で突き詰める先人たちの努力には感服すると同時に、

よほど暇だったんだろうな、とも思う。

 

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誰もが理解できる納得できる定義、前提条件を置かないと、

議論の発展も、ロジック構築もままならない。

他の人に強要はできんけど、

少なくとも自分だけでも心掛けようぜって感じになるな。

言い換えれば、その場にいる皆が同じ目線で議論する姿勢が数学にはある。

 

データの見方とか、統計処理の仕方は各論的な話で、

より広義意味では、物事の思考方法を知る手段として数学は有効だ。

本当に今更なんだが、もう少し勉強し直してみようか。

2021年8月 アレコレ考えちゃう映画

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今年になってから、何となく面白そうと思う映画を観に映画館へ足を運んでいる。

最近だと『サイダーのように言葉が湧き上がる』を観た。

全体を通して画面の色彩が豊かなのが印象的だった。

Never young beach が主題歌を担当していた点も気に入ったポイントだった。

 

これまで積極的に映画館へ行くことが少なかったけど、

今年に入ってから面白そうな作品が増えてきて、ワザワザ足を運んでいる。

今年の8月は2本を観た。

どちらも考察に富む面白い作品だったので、感想を書き残しておく。

 

 

1.サマー・オブ・ソウル(あるいは革命がテレビ放映されなかった時)

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この映画はCMとかではなく、 映画館入り口にあったチラシで知った。

動員観客が~、興行収入が~、とかそういう商業的な執着は感じ取れなくて、

純粋に監督が世間へ発信したい事実をまとめたドキュメンタリー映画だった。

会場に入っても、封切り2日目だというのに

200人以上入るスペースに観客が6人しかいない。

それくらい客層もニッチということか。

 

1969年、アメリカ・ニューヨーク州 ハーレム地区で開催された

「ハーレム・カルチャラル・フェスティバル」の様子と、

それがアフリカ系アメリカ人が中心の黒人文化にどんな影響を与えたのか、

それを黒人を取り巻く当時の社会情勢と絡めて解説している。

と同時に、黒人音楽が現代のポップやロックミュージックに

強烈に影響を及ぼしたことが感じ取れる。

 

当時、リンカーン大統領の奴隷解放宣言から100年余りが経過した一方、

黒人に対する差別は依然として残り続けていた。

例えば、公共交通機関で使用できる座席が人種で別れていたり、

黒人だけが特定の地域に固まることが暗黙の了解になったりしていた。

だけど、この背景があったからこそ、黒人音楽が醸成されてきたのも事実だった。 

詳しくは、みの著『戦いの音楽史』が参考図書になる。

同書は以前の記事にも取り上げた。

sciencecontents.hatenablog.com

 

黒人にも一定の社会的な自由が認められているものの、

一般的な扱いが劣悪だったことには変わりなかった。

そんな中、黒人の権利を支持するリベラル層だったキング牧師

ジョージ・ケネディが暗殺されたのは黒人コミュニティを絶望させた。

そんな先導者を無くした黒人たちの代弁者になったのは、

当時活躍していた同じく黒人のミュージシャン達だった。

黒人ミュージシャン達は、そんな世相に対するプロテスト・ソングの

意味合いも含めながら、ファンクやロックを発展させていった。

これは、現在のポップ音楽の礎にもなっている。

 

劇中のフェスティバルの記録では

スティービー・ワンダーとかスライ&ザ・ファミリーストーンなど

若かりし頃のレジェンドが登場する。

特に注目したのがステージ上で黒人ミュージシャンが観客へ放った言葉だった。

「黒人のみんな準備は良い?」

「我々は美しい存在だ」

「我々ニ◯ロ ではなく、Blackだ」

(そのままの言葉ではないが、そんなニュアンスのことを言ってた)

 

観客のほとんどが黒人であったことから、このメッセージは大きな爪痕を残した。 

これは当時の黒人コミュニティにとって、意識改革の契機になった。

パーソナリティとしての黒人を社会的なコンプレックスと認識するのではなく、

優れた、美しい人種であることを再認識するきっかけだった。

アフリカ音楽を基礎にした感性、文化的な強みを背景に、

自分たちが本当に楽しめる世界を構築していく試みともいえる。

 

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それまでのステレオタイプを音楽の力で塗り替えていったミュージシャンや

その周囲の人々の行動には、今の時代を生きるためのヒントが

隠されている気がしている。

また頭が整理できたら、色々考察してみたい。

 

実際に映像で見た方が圧倒的に実感しやすいので、

是非観てみて欲しい作品。

 

 

 

2.岬のマヨイガ

misakinomayoiga.com

 

これは単純に作画の雰囲気が好きで観に行った映画

劇中音楽を羊文学が担当している。

 

東日本大震災から10年が経過する節目に、東北をテーマにしたアニメ映画プロジェクト

「ずっとおうえんプロジェクト 2011+10 」で制作された。 

その背景もあってか、主人公たちは震災で居場所を失った設定であり、

人間を歓迎してくれる不思議な古民家「マヨイガ」に出会うところから始まる。

物語のストーリーは妖怪達「ふしぎっと」との交流を軸に進む。

遠野の妖怪伝説があるように、岩手を中心に東北地方には妖怪にまつわるエピソードが多い。東北らしいテーマだ。

 

 

ここからはネタバレにならない程度に感想を書く。

全体を通して得た印象は、震災で多くを失った人々に対し、

今目の前にある大切なモノ(者か物)や環境を再認識して貰うメッセージを込めた作品だった。

災害が起きれば、その土地の人間は多かれ少なかれ何かを失うことになる。

身近な人間、住宅、思い出の場所・物、仕事、街のシンボル いろいろ。

重要なものを失えば、多くの人間は負の感情を抱える。

それが積み重なると、やがて大きな負の雰囲気として地域に広まることになる。

過去の歴史を紐解くと、こういった雰囲気を古い時代の人間たちは

妖怪など異形の存在として表現する例が多く見られる。

作者が何を思って創作したかは想像の範囲内でしかないが、

ストーリーと妖怪との関連性はそういった見方ができるかもしれない。

暗い雰囲気は地域の人間の活力を下げ、復興や次の日常を取り戻す妨げになる。

10年の年月を経ようと癒えない傷はあれど、

今、目の前にある場所、人、物の重要性を再認識し、それを育み

次の世代の街を創っていくことへの前向きなメッセージを感じた。

 

でも、見方を変えれば、災害以外のことでも言える普遍的なメッセージとも取れる。

大小関わらず、数十人以上の人間が集まるコミュニティにおいて、

その場の空気はコミュニティの精神的充実へ大きく影響する。

かなり限定的な話になるが、

今のコロナ渦で世間全体にウィルスのみならず、

後ろ向きな空気も蔓延していると感じている。

今、目の前にあるものを大切にして、前向きに生きる方法を模索しよう。

言い換えれば、「如何にして今の瞬間を楽しむために知恵を絞るか?」

を投げ掛けているようにも思える。

 

他にも考察要素が多い作品なので、是非観てみてほしい。

羊文学、エエで。

 

 

次は何を観ようか。

10月くらいにまとめて新作を漁ってみるかな。