培養X年目の与太話

培養、与太話

細胞培養と与太話で生きてます。

多分20年後もカッコいいと思う音楽 Steely Dan

かれこれ12~13年くらい洋楽を聴き続けている。

その中でも Donald FagenWalter Beckerのバンド Steely Dan はベストアーティストだと思ってる。

 

Fagen はなかなか来日公演を行わないアーティストなのだけど、最近では特別ユニット "Dukes of September" として来日していた。

Dukes of September は Donald Fagen を筆頭に、同じ世代の音楽シーンを先導したMichael Mcdonald や Boz scaggs が名を連ねていた。

来日した当時、自分は大学2年生だったけど、実験実習を早めに切り上げて日本武道館に急いだことを覚えている。

 

Live で Steely Dan神曲 "Hey Nineteen" を聴けたことはこの上無い喜びだった。

 

 

 

考えてみれば、Steely Dan が日本で有名になり始めたのは1970年代だった。

自分の親世代でも聞いている人は限られているアーティストにもかかわらず、2020年現在で26歳の自分がハマっているのはかなり珍しいことかもしれない。

親が実家で聞いていたから、彼らの音楽および似たようなジャンルの音楽に触れてきた履歴が今の自分を作っているのかもしれない。

 

 

自分の誕生年の1993年は、 Steely Dan が活動を休止後に Donald Fagen がソロアルバム "Kamakiriad" をリリースした年だ。

親がアルバムを買ったのは自分が生まれて間もない頃と聞いている。

そんなこともあり、実家の床に敷かれた毛布の上で寝ていた物心つかない頃からFagen 節に触れることになった。

 

 

それから14年くらいは親が車や実家の居間で流す洋楽を聴いていた。

洋楽を意識して聞くようになったのは受験を控えた中三の時だった。

音楽の勉強の延長線で"We are the world" や Beatles のベスト盤を聴き、そこからQueen に傾倒した。

そんな中、他のアーティストを漁る中でSteely Dan に行きついた。

確実に聞いたことはあったのだが、しっかりと認知、意識して聞くようになったのは高校に入ってからだった。

親の「何度も聞くことでカッコ良さが分かってくる」との言葉を半ば信じて聞き初めてからハマり続けて今日に至る。

 

 

もちろん、同世代の人間には Steelt Dan を聞いている人はおろか、バンド名だけでも知っている人間もほとんどいない。

並の感覚であればSuchmosRadwimpsや髭男とかを聞いているのかもしれないけど、現代っ子の自分にもこのバンドは本当にカッコいいアーティストだと思う。

 

一見今の音楽から離れた存在に見える彼らだが、実は現在一線で活躍するアーティスト達にも大きく影響を与えている。

実際、Suchmosキリンジ、その元メンバーだった堀込泰行の音楽も彼らの音楽からモロに影響を受けているし、作品のそこかしこにSteely Dan の痕跡が見つかる。

堀込泰行の "New Day" は一度聞くと、「ああ」と納得するレベルで影響されていると思う。

 

 

そんな不変的なカッコよさを見せつけてくれる音楽だから20年後もカッコいいと思うはずだし、音楽としての良さを理解したいとも思う。

【痕跡2】菌から生まれた除菌スプレー?

菌の力を借りて除菌スプレーをつくる。

矛盾を感じるかもしれないが、そんな商品が実際にある。

Begin誌でも掲載された Dover のパストリーゼだ。

酒造メーカーの技術を使って作られたアルコール製剤

酒造りに使う菌の発酵時に産生されるアルコールを使っている。

 

特に注目したいのは、食品にもスプレーできる点だ。

もともとは食品としての酒造ラインから生まれたものであるから、

当然口に含んでも害はない。

 

www.dover.co.jp

 

厳しい環境でミッションをこなす南極観察隊の標準装備という事実がプレミア感を演出していた。

 

【痕跡1】天然バクテリアから作られたシューケア製品

私的な趣味として、培養に絡む製品を生物の力を使った「痕跡」として集めている。

微生物の力を使ったものとか。

ヨーグルトとか漬物とか食品に限らず、様々な生活用品に使われているものも出てきて面白い。

 

つい先日雑誌で見かけて買ったのは、微生物の力を利用したシューケア用品だった。

南アフリカに拠点を置くブランドSneaker Lab が開発したスプレーで

微生物の発酵物を配合しており、強力かつ持続的な防臭効果が期待できる。

この時はOp (Odor Protector) を購入した。

 

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小さいボトルで持ちやすい点もそうだが、何よりもパッケージのデザインが個人的に刺さった。

元素周期表の表記に似させたうえでカッコいい演出をしているのがニクい。

普段履いているスニーカーにスプレーしてみた。

アロマによくある木の香りに近い。

スプレーしてから2週間くらい経っているが、臭うことはない。

値段も¥880とリーズナブルだし、いい買い物をした。

 

さて、次はどこに痕跡があるだろうか?

 

sa.sneakerlab.com

 

www.sempre.jp

 

コミケ同人誌の私的レビュー(C97)

冬コミが終わりましたね。

今回も良作揃いだった。 

個人創作の参考になるものもあったから、熱が冷めぬうちに私的レビューを書きたい。

 

YOMEYUME 3 建築は嫁の夢を見せるか(by YOMEYUME さん)

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前々回のC95から購入しているサークルさんの新刊

第1作を読んだ時から「凄い!」と思っていた作品で毎回楽しみにしている。

内容は作者自身の二次元嫁のための住宅を設計

作者の嫁への愛情を感じるが、何より驚くのが抽象的な愛情を見事に言語化し、

建築設計というアウトプットに落とし込んだ点にある。

また、全ての設計が理論上建造可能とのこと

二次元でありつつも、リアルクローズに近づける表現へのこだわりを感じる。

それにしても、バイオ分野で活動する自分の目には

建築分野が単なる理系の一分野とは異なるものとして映る。

ある建築家のインタビュー記事を読んだことがあるが、

伝統的な家づくりの手法を取り入れつつ、如何に現代的で、

如何に心地よい空間を作るか?など定量的な評価が難しい、現代アートのような話だった。

かと思えば、それらの設計は構造力学の知見から建造可能性が科学的に担保されていたりと

実学と思想が組み合わさることによって成立する分野といえる。

こういった表現はバイオや工学分野では見受けられない。

 

さらに付け加えるとすれば、作者は嫁たちが彼女達の選択と行動を通して行きついた世界の

全てを肯定することをモットーにし、実際の設計にもそれが反映されている。

何、このレベルの高い愛情表現。。。

この表現の姿勢には学ぶことがある。

自分はいつの日か培養技術をリアルクローズな存在にするため表現活動をしていると言って

過言ではない。

それは現在の生活を否定し、根本から塗り替えていく技術ではない。

あくまでも自分が作ってきた生活の美点も欠点も肯定し、

それにマッチする文脈やデザインで培養技術を実装していきたいと考えている。

読んだ後で新しい言語表現に気づかせてくれる本は良作だと感じている。

次回作も楽しみだ

 

 Ciqlo Vuoto 2019 Winter (by Ciqlo さん)

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アニメ「ゆるキャン」の同人誌

内容は本編の主人公たちが登場するキャンプ×ライフスタイル本

キャンプ術の紹介を軸としつつ、スパイスや調理器具を含む料理ネタ、

実際に販売されているスニーカーを含むファッションアイテムの紹介など

カルチャー誌の意味合いが強い。

似た形態の同人誌をコミケで幾つか目にするが、イラストのテイストと内容が最もマッチしているのが本作では(私的感想)。

今年の新作のヒントになりそう。

 

 

趣味で始める ギリシア哲学 (by 丸猫出版 さん)

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哲学入門書

文章が非常に平易で、情報が無駄なく整備されていて理解しやすい。

大抵学問系の入門書は情報整理を個人に委ねることが多いのだが。

 

一方で、哲学が成立した背景の理解を促す以上の意味が含まれている。

古代ギリシア当時の著名人たちの関係性から発生した

様々な事件やその影響を紐解くことで、現代を生きる自分たちにも通ずる視点を与えてくれる。

全ての背景は繋がっており、互いに相互作用することで更なる背景を作り出す。

今後、ルネサンスに至るまでの続編が出てくれることを期待

 

YAMA de sodatsu (By )

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シュール作品枠

サークル前を通りかかった時、表紙だけ見て買った作品

内容は田舎育ちの作者の記録だが、イラストのテイストもあってか一貫してシュールof シュール

なんかクセになる。

理解するのではなく、世界観を味わう系

気になる方は買って味わってみることをお勧めする。

 

 

さて、次回はどんな作品に出合えるのやら。

 

 

今年の自分の作品は

昨年は相方と共に挑戦をしてみたことで、様々な知見が溜まりった。

そして、今年も新刊に向けて動き始める。

「培養」という軸は一貫させつつ、それをどこまでリアルクローズない気で表現できるか、引き続き挑戦していこうとと思う。

次回コミケC98には何かしらアウトプットをしたい。

 

物事との向き合い方が変わった2019年

あと1日で2019年が終わる。

記憶が新しいうちに2019年の振り返りをしてみたい。

今振り返れば、今年は総じて物事との向き合い方が大きく変わった年であったと思う。

ここでいう物事というのは、表現活動、仕事、自分自身を指す。

 

表現活動について

コミケを含む同人誌即売会で活動を始めてから早4年が経過しようとしている。

今思えば、活動形態もこの1年で大きく変化した。

まず一つの変化として、個人サークルを立ち上げた。

元々培養肉を中心とした科学系評論本に記事を寄稿していたが、

細胞農家を職業とする日々を送るにつれ、現状の表現の満足できなくなったからだ。

 

この1年間の創作活動において、自分の不満をどう言語化するかが大きな課題になった。

培養肉やその背景となる培養技術に対する愛着はある。

一方で、それらが SFや未来思想のような明らかなモード寄りの発想の枠に囚われすぎていることに不満を持つようになった。

もっと今の日常の生活に溶け込む、リアルクローズな表現やプロダクト試作ができないか?

これが個人的な課題となった。

今では多少なりとも言語化が容易だが、今年の夏まではひたすら言葉の選択に悩み続けた。

霧が晴れてきたのは半年くらい試行錯誤してからだった。

 

sciencecontents.hatenablog.com

 

言語化を進んだ要因として、自分自身が続けた思考活動もさることながら、

制作仲間でデザイナーの芳武玖(Hisashi Yoshitake) の存在や、同じく同人界隈で活動する作家たちの作品の影響もあった。

 

同人作品を見ていても、まずは創作にあたってのモチベーションを言語化することから始める。

そこを起点にしてイラストや3D、模型など更に具体的な形に落とし込んでいく。

自分の場合、他人への共感を望んだことで余計に難しい作業になった。

 

 

 

昨年と比べれば表現の幅は確かに広がったし、自分のしたいことや、それを成就するための手段も鮮明になりつつある。

だけどまだ満足には至らず、来年も継続して創作をしていきたいと思う。

 

仕事との向き合い方

やや大きな仕事を任せてもらえるようになり、忙しく動く時間が去年よりも増えた。

任せてもらうようになったということは、結果を求められることも必然的に増えることになる。

端的に言って仕事で結果を出すのは非常に難しい。

学生時代のテストとは全く別の世界観の難しさがある。

難問であっても学生テストのように問題文がある、

つまりは課題が事前に設定されているならばまだ可愛いもので、

状況によっては問題文すら無いことも多い。

言い換えれば、自分で課題を設定しないとならない。ここでミスると後のアウトプット全てに響くことになる。

今年の前半までは来る仕事拒まずな姿勢、というよりも「仕事を選ぶ目線が無い」状態で生きていたもんだから、 todo が散在として中々先に進めないことがほとんどだった。

だから、今はある程度仕事を切り捨てていくことを覚え始めた。

これが効果覿面で、日々の業務が整理されて圧倒的に動きやすくなった。

それもこれも、頼りになる仲間が増え会社の体制が整ってきたからに他ならない。

 

 

自分自身について

自分自身の特性を正確に把握するのは難しいと感じた1年だった。

大きな発見として、自分が元来ADHDの特性が強いことだった。

様々な周囲からの指摘もあり、病院でも相談をしてみたら、概ねそうでしょうとのことだった。

言われてみれば、興味対象が次々に移り変わったり、作業に集中できなかったり、逆に集中し過ぎたり、一般的な同年代の社会人ならできることが出来ない、なんてことは多いことに気が付く。

これが原因で病んで倒れた瞬間もあったが、今ではその特性と付き合う手段を見つけ始めている。

実際のところ、同様の特性を抱えて生まれた人間の中でも、社会で成功する人間も大勢いるのだが、彼らの共通点は自身にハマる分野を見つけていることにある。

今年は自分にとっての「ハマるもの」探しに時間を最もかけた。

 

というわけで今年が振り返りは終わり。

コミケ最終日行ってきます。