培養X年目の与太話

培養、与太話

細胞培養と与太話で生きてます。

純肉研究を割とオープンに発信する理由

f:id:ibunyayugo:20161230233528j:plain

 

 

おはようございます。
更新まで随分と時間が経ってしまいました。

 

さて、このブログを好んで読んで頂いている方には、僕が純肉(培養肉)開発に関わっていることをご存じかも・・・しれません。(多分そう)
コミケで薄い本を発表したり、ニコニコ動画に動画をアップしたりと割とオープンに情報発信をさせて頂いております。

 

そんなことをしていると、よくこんな質問を受けます。

「なんでそんなにオープンに発信する必要があるの?」

これ、結構な話なんで記事にしてみました。

 

 

 

1.社会全体で問題を共有し、社会全体で解決したい

これが一番の理由ですかね。こんなにも純肉研究をやっているのも、結局は将来の、もしくは現在進行形で来ている食料問題を解決したいがためです。

 

地球規模で起きている問題なわけですから、問題を発信していくのは共有していくのは当然のことです。解決に協力してくれる人を集める目的でもあります。

 

それに扱っているのが「肉」である以上、理系研究者だけではどうにもならない部分があります。「文化」との兼ね合いです。

 

文化といっても色々な要素がありますが、例を挙げると以下のような感じです。

・家畜を殺生しなくても良いなら、熱心な仏教徒の人でも食べれるの?

ベジタリアンから見た純肉ってどうなの?

ベジタリアンの人でも、野菜しか食べない理由は健康、動物愛護、宗教など多岐にわたるため、一概には言えない)

・純肉ってその地域の肉食文化に合っているの?

(肉食文化といっても、食べる肉の動物種や調理法に偏りがある場合もあります)

 

こういった部分については、まだ社会で明確に議論される段階には来ていません。
社会全体で課題解決を行うためには、まず議論を起こさなくてはなりません。

 

medium.com

 

medium.com

 

 

 

2.純肉の社会的イメージへの影響

ゆくゆくは食品として市場に出すことを狙うと、
「消費者目線のイメージ」が重要になってきます。

 

それを考えるにあたり、一介のバイオ研究者として注目に値する事例があります。
遺伝子組み換え食品の件です。

 

遺伝子組み換え」や「遺伝子変異」という現象は、自然界でもごく自然に起き得ることです。にもかかわらず、こんなにも食品業界側も消費者側も「遺伝子組み換えではない」という表示に振り回されている感じが拭えません。

 

元々この問題は、とある大企業による独占戦略に対して、ネガティブキャンペーンが勃発したのがきっかっけでした。それがいつの間にやら、

 

以前、Wiredからこんな記事が出ていました。
将来の食肉を語る記事ではありますが、少し気になったのは
純肉に対してややネガティブに書かれていた点。
事実として間違ってはいませんが、ネガティブなイメージが独り歩きしてしまうと
今後の食料問題の解決に繋がりにくくなります。
こんな巨大サイトに対して個人ブログ主の僕が言っても仕方は無いのですが。

 

wired.jp

 

 

 

3.単純に面白いでしょ??

最後ですが、これは発信する側のモチベーションに関わることです。
誰もが純肉の最先端情報にアクセスできれば面白いのではないでしょうか?
最近ではバイハッカーという言葉も出てきているように、個人でのバイオ研究へのアクセスが容易になってきています。

個人で得た情報をもとに、個人で純肉の研究開発ができる日もそう遠くはないでしょう。様々なソフトウェアが個人の力によって進化してきたのを参考にすると、純肉もいつか同じ道をたどるのでは、と。

 

10年前まではSFの中だけの世界とされてきたことが、今や
「できるかもしれない」という領域まで来ているんのです。発信せざる得ませんね。
SF文化が発展している日本やアメリカでは尚更。

 

 

ちなみにShojinmeat Prijectの代表もこんなことを言ってます。 

 

 

さて純肉開発の現状ですが、既に今年の目標が掲げられており、
身が引き締まる想いです。

 

やりたいことをやるためにも、研究成果以外に

「どう社会にアプローチをかけていくか」が重要な1年になります。

 

 

何かをやるときには「人・者・金」が重要だなんて嫌と言うほどに聞きますが、
現実的にこの問題は直視しないとダメな気がしています。

新年あいさつと2017KPI – Animescience.net : 中二病するなら宇宙規模で!

 

 

 

なんとなく現実的なことも触れつつ、今回はお開きにしようと思います。

またの後日!!

 

 

 

その他参考サイト

SHOJINMEAT – Animescience.net : 中二病するなら宇宙規模で!

ニコニコ動画は如何に科学技術に貢献するか?

f:id:ibunyayugo:20170109183246p:plain

 

こんにちは。今日も変わらず科学コンテンツについて考えてみました。

突然ですが、皆さんはニコニコ動画を見たことがありますか?

 

www.nicovideo.jp

 

僕は去年から色々な経緯があり好きになりました。
特にニコニコ技術部の動画は頻繁にチェックしています。

 

 

一人で動画を見ながら、よくこうなります....

f:id:ibunyayugo:20170109182840p:plain

 

さて、ニコニコ動画を見ていると科学技術系の動画が多いことに気が付きます。
しかも動画の内容がYoutubeよりも濃いんじゃないかと思うほどです。
毎日のようにエッジの効いた研究や技術に絡む動画が投稿されているんです。

 

そこで僕は思いました。

 

 

 

ニコニコ動画って科学技術の発展に貢献してないか??

 

 

 

そんなわけでこの記事では、
ニコニコ動画に投稿された科学技術に絡む動画を紹介すると共に、
如何にしてニコニコ動画というサイバーカルチャーが科学技術に貢献しているかを

 

  1. 分かり易さとしての動画使用
  2. 親しみやすさとしてのサブカル
  3. コアな内容だからこその面白さ

 

の3要素に分けて持論を展開しようと思います。

 

 

 

 

1.分かり易さとしての動画使用

これは単純明解な話です。
どんな事も文章のみで説明するより、動画を使用した方が伝わり易くなります。
ストーリーを伝える際には尚更です。

  

www.nicovideo.jp

 

 

難解な数式だけでは、理系でも理解するのは難しくなります。
理論的な理解の手助けになったとしても、直感的な理解は難しいためです。
直感的な理解には動画など視覚的なコンテンツが必要です。

www.nicovideo.jp

 

 

 

2.親しみやすさとしてのサブカル

 これもニコニコ動画ならではの要素です。
初音ミクに始まり、その他大勢のキャラクターを使用した動画が投稿されています。

 

では何故サブカルがコンテンツ要素として有効になるのでしょうか?
僕は「科学への精神的なハードル」(取っつき易さ)にあると考えています。

 

「科学=分かる人だけが扱う分野」という多くの人が何となく持っているこの固定概念を取り払うために、サブカルが一役買っていると考えられます。

 

ゆっくり解説動画を作る際にお馴染みの " Soft Talk" が公開されてから、
音声で説明することもでき伝わり易さが向上したのは言うまでもありません。

 

www.nicovideo.jp

 

 

 

www.nicovideo.jp

 

 

 

 

www.nicovideo.jp

そういえば数年前から、この手の本を大型書店で見かけるようになった気がします。
原子記号が萌えキャラに仕立て上げられたのを皮切りに、
今では物理法則までもがサブカル混じりにされています。

 

 

3.コアな内容だからこその面白さ

動画主が扱っている技術がコアであることも大きな要素でしょう。
特にニコニコ技術部ではそれが顕著です。

 

方向性は違えど、それぞれが持つ技術力で課題をハックする様子は、
ハッカソンに似た部分もあります。

 

ただハッカソンと大きく異なるのは、これらの技術実装はニコニコユーザーが
「これが好きだから」という本質的な感情から行われていることです。
そこに儲けるという発想はありません。

 

www.nicovideo.jp

 

www.nicovideo.jp

 

www.nicovideo.jp

 

www.nicovideo.jp

 

これらの開発は、一見すると無駄なことのように感じるかもしれません。
しかし、ここで得られた技術が「考え方」によっては何万通りもの社会実装の
ストーリーを思い描くことだってできます。

 

  • ウェアラブルチェアは人間に第2の肢を生やすかもしれない
  • 勝手に入るゴミ箱は、ポイ捨てによる道路の汚れを解決してくれるかもしれない
  • スイッチを切るロボットはコンロの火の消し忘れ防止に活用できるかもしれない
  • ミクロボット+人工知能で更なる高みに到達できるかもしれない

 

 

「新しいことは、無駄なことからしか生まれない」という言葉をご存知でしょうか?
僕が風呂に入りながら考えたそれっぽい言葉です。

 

 

 

 

そして最後に・・・・・・・・

僕も昨日動画を投稿しました。
前回反響を頂いた「人工培養肉を作って食べてみた」に引き続き、
今度は「実験の環境を作ってみた」です。

 

www.nicovideo.jp

 

前回頂いたコメントを参考にしながら動画を作りました。

 

 

 

ちなみに。

 

今回話に出していた「サイバーカルチャー」という言葉ですが、僕はこの本を通じて勉強しました。

 

文化的な背景を調べると、意外なまでに奥深いことが分かった1冊です。
ご参考までに。

 

ではでは。

 

SIGというサイトについて

f:id:ibunyayugo:20170104070606p:plain  f:id:ibunyayugo:20170104070650p:plain

 

 

どうもKeitaです。
新年になってもう4日ですね。早いですね。

 

普段はCG制作ばっかりやってる僕ですが、今年からはもう少し記事などのコンテンツ制作をしつつ、視野を外に広げていければと思っています。

 

そんなわけで今回は、共に記事制作をしている "SIG" というブログについてご紹介しようと思います。

 

scienceinterestgadget.com

 

このブログは「ひろやん」さんが運営する科学系個人ブログです。
スマホアプリやらFin-Techやら流行り物が「科学・テクノロジー」としてブログに書かれることが多くなった昨今、彼のブログは純粋な「基礎研究」「応用研究」をもネタにしています。非常に貴重な存在です。

 

 

そんな彼と関わり始めたのは去年の7月頃。
同じ科学系ブログを運営している人として、Twitterでフォローしたことが切っ掛けです。初めは興味を持った僕の方からコンタクトを取った経緯です。

 

 

その頃から Shojinmeat Project のメディア・コンテンツ部門に所属していた僕は、
純肉(培養肉)ネタを記事にして貰いました。これが最初の協同の記事でした。

scienceinterestgadget.com

 

この記事が意外にバズったのは良い思い出です。
公開からかれこれ半年経過していますが、未だに閲覧数上位10位に入っている記事です。コミケの後だから、というのもあると思いますが。

 

 

 

その後、似たような純肉ネタでWiredにも記事が上がりました。

wired.jp

 

純肉をだいぶネガティブに捉えた記事だったんですよね。
確かに事実として間違ってはいないのですが、必ずしもそうではないだろうと
思うところもあったわけです。

 

これについては書き始めると原稿用紙3枚では収まらないので割愛します。
純肉の背景を知りたい方は、ここのスライドを参考にどうぞ。

 

 

 

 

これについて「ひろやん」さんが反論したのが、その後の記事でした。
科学を愛する一人の研究者として、はたまた社会実装を加速させることをポリシーにしているブログ運営者として、彼の胸中が分かります。

 

scienceinterestgadget.com

 

 

という具合でネット界隈でも少しずつ純肉の認知度が高まってきたころ、
僕が共同執筆した『純肉作って食べてみた本』の第1弾がコミケで頒布されました。
次にそのレポート記事を寄稿させて頂きました。
また、会場の別ブースにて頒布されていたバイオ系薄い本についても触れさせて頂きました。

 

scienceinterestgadget.com

 

 

最先端の科学技術が良くも悪くも注目を浴びることから、研究者・開発者がなるべくその全容をオープンにしていくことの重要性を書かせて貰いました。
また遺伝子組み換え食品」と同じ轍を踏みたくはありませんし。

 

元来コミケという場所に来る人々は、先端技術に対する感度が高い傾向にあります。
そんな意味でもコミケで科学コミュニケーションを取ったのはある意味正解でした。
Shojinmeat Project はあくまでも草の根研究団体なので、こういう場所で発表するのが金銭的・人的コスト面でも一番良いと思われます。

 

 

さてこのように何度か記事を執筆して貰ったり寄稿したりを繰り返した後、
「年内に後一つ大きな話題を放り込みたい」という僕の個人的な願いもあり、
こんな記事を書いて貰いました。

 

scienceinterestgadget.com

 

題名の通り「ニコニコ動画」に上げた「純肉作って食べてみた動画」についてです。
3日間で4万回再生に到達したのは2016年で特に印象深い体験でした。
もともとニコニコ動画にはニコニコ技術部というものづくり系ジャンルが
あるのですが、そこへ「生ものづくり」と称して放り込んだ次第です。

 

 

今後もSIGにはお世話になる気がしてなりません。
そしてこれから色々な方と絡むことで、更なる発展をしてくれることを願います。

 

 

なお、近日中に新しい記事を寄稿します。
どうぞお楽しみに。

C91 サークル出展レポート

世界最大級の情報発信の場へ 

今回で2回目の参加となりましたコミケへの参加は、個人サークルとして出展になりました。夏は抽選に落ちてしまい委託参加だったので感無量でした。

夏に参加してから、コミケの情報発信源としての強さを感じ始めました。
単なる同人誌即売会で終わらないほどのパワーがこのイベントにはあります。

 

さて、我がサークル "Co-Lab"ですが夏と同様
かなりシュールなサークル構えをしておりました。(自分で言うのはアレか)
今回は新たにポスタースタンドを用意し、無駄にアピールしまくりました。

 

      f:id:ibunyayugo:20161230234304j:plain

 

お世話になっているハニュー氏にも協力頂き、科学コミュニケーションを取りつつ、薄い本を売りつつ、という具合で進みました。


印象的だったのはポスターを見た方々の多くが
「なにこれ!!??」と驚き半分、蔑み半分の目で立ち止まってくれたことです。

 

そんなこんなで反響を頂き、14時半には300部が完売しました。
本当に有難うございました。

なお、この戦果は海外の代替食糧団体 New Harvest に送りつけたらしいです。

 

 

 

さてさて、購入された方の反応は・・・

本日は1月2日。年を明けて落ち着いた人たちが、コミケ戦利品を漁る頃。 
Twitterで調べてみると、出てきました。結構レビューしてくれている人が。

 

 

 

 

単に凄いというツイートの他に、「技術的に難しそう」という意見も頂きました。
今回の薄い本を出した目的の一つに
「従来の培養方法だと食肉生産は無理と知ってもらう」ことがありました。
まずは一つの目的が達成されたと考えています。

 

 

 究極の言論・表現の自由の場として

 今年から本格参加してみて改めて感じたことは、
コミケは究極の言論・表現の自由の場」であるということでした。
かたちでは公共の場ではあるものの、実際は一部のコアな人種が集まる場でもあります。ネット世界の仲間意識に通ずる部分があるかと。

 

 

ある人の言葉をお借りすれば、
「半分開けていて、半分閉じている空間」と言えます。

 

 

そんな場であるからこそ、個人の自由な発想で自由な作風のコンテンツが販売されるのでしょう。「これだからコミケは止められない!!」とは本当のことのようです。

 

 

f:id:ibunyayugo:20170102103405j:plain   f:id:ibunyayugo:20170102103406j:plain

f:id:ibunyayugo:20170102103408j:plain   f:id:ibunyayugo:20170102103407j:plain

f:id:ibunyayugo:20170102103410j:plain

 

 

最後に・・・・
買った科学系の薄い本で、最も秀逸だったのがこれでした。 

 

 

 それではまた。
今後も開発頑張るぞい!!

 

 

 

補足情報

 純肉(培養肉)についてはこのスライドが一番まとまっています。ご参考のほど。

山中先生の「絵を使うことの重要性」をコミケで活用した件

圧倒的説得力だ!!

科学の発展は常に世に公表されるべき。
更に言えば、「分かり易く」「興味深く」説明するべき。
様々な場所で同じようなことが言われてはいるものの、多くの研究紹介の場で効果的にその意義が伝えられていない様子が目立つ。 

 

はじめに|伝わるデザイン

 

www.recomtank.com

 

 

 

このあたりについては、山中先生も似たような意見を述べている。
ここの記事ではむしろ「絵を使うこと」「目を引かせること」に注目している。
更に当たり前のことだが、『絵と説明が一致していること』の重要性も改めて述べていた。

gendai.ismedia.jp

 

プレゼンをする機会は直近では無いけれど、これは試してみる価値はある。
公に近い場で研究発表が出来る場所、といえば・・・・・・。

 

 

とりあえず薄い本に使ってみた

というわけで早速こちらも実行に移しています。
どこかと言えばコミケ(C91)で。

あれですね。例の『純肉(培養食肉)食べてみた』本ですね。 

 

 

この冬の新刊は、既刊に比べ写真や3DCGで制作した説明図画を多く使用しています。
実際に本を手に取って見てから購入する方がほとんどなので、こういう掴みはあっても良いのでは?と思ったわけです。

 

f:id:ibunyayugo:20161231000842p:plain

(細胞が繊維足場に接着する様子)

 

f:id:ibunyayugo:20161231000955j:plain

(未来の純肉(培養食肉)工場イメージ)

 

 

上手く響いた・・・のかな??

コミケは視覚コンテンツが多く見られるため、なるべくなら絵を用いてアイキャッチできる頒布物が望ましいと思われます。そして今回の結果は・・・・

 

結果としては、先行頒布で持っていった100部が見事さばけました!
本当に有難うございました。
一時は爆余りするんじゃないかと思いましたが、終了まで1時間半を残し完売しました。

 

 

 

さてはて、3日目(本日12/31)はどうなることやら?
爆余りするなよ!!