培養X年目の与太話

培養、与太話

細胞培養と与太話で生きてます。

サークル『Culture Square』作りました。冬コミサークル申し込みました。

この度、思うところあり自分のサークルを創るに至りました。

既に冬コミへのサークル申し込みも済んでおり、どうなるかは分かりませんがとりあえず運営しようと思います。

 

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とはいったものの、具体的な構想はまだまだなので、これから詰めることになります。

自分の活動はいつもこうです。初期状態において具体的な物など在りはしない。

目的も構想も意義も全て後付けで考えている。

一方で、それでも始めたということは、何かしら想いがあってのはずで。

頒布内容にも「α版」とあるのが良いでしょ?所詮不完全なんですよ。

そんな気持ちの捌け口になってくれる即売会の存在には心底感謝してます。

 

 

受かれ!!!

コミティア125 サークル参加します!

この夏もまた出します!「純肉本」 

 

未来の純肉実装に向けた様々な考察、小説、細胞培養実験の体験記まで幅広く扱う評論本です。

 

自分も記事を1つ投稿しています。

 

コミティア125 2018/08/19 

U-19a 評論ブースにてお待ちしています!

 

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結局は個人が好きなものを食べれば良い、という話

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言いたいことはタイトルの通り。

「結局は個人が食べたいものを食べれば良い。」

そんなことを感じた体験をしたので書きたいと思います。

 

 

強烈な天ぷらおばちゃん

 

ある晩、実家で色々作業をしていたら

「今日は外食にしよう」と言われ一駅離れた場所まで出かけることにした。

 

目当ての店は隣駅から徒歩2分くらいのところ
店前に大きく「有機野菜あり〼」とある。
どうやらそのような趣向の店らしい。

 

中に入ると元気の良いおばちゃん(60代後半くらい)が厨房から甲高い声で「いらっしゃい!」と言ってきた。中はややノスタルジックな雰囲気の和風内装だった。

 

席に着いてメニューを見ると、有機栽培の天ぷらが売りらしい。
それを頼みしばらく団欒していると、天ぷらが運ばれてきた。

 

おばちゃん曰く「EM農法」という方法で栽培された有機野菜を使っているとのことだた。初めて聞く話だ。おばちゃんは自分で畑をやっているらしく、そこで採れた野菜しか料理に使わないのだとか。

肉や魚も使われていたのを見る限り、菜食主義者というわけではなく、あくまでも自分の健康方針を邁進する人という印象だった。

 

EM農法とは土壌環境を改善する微生物を使った農法のことを指すらしい。
おばちゃんの口から窒素固定菌という専門用語が出たことから、それなりに勉強もしているらしい。 バイオフローラというどこぞで聞いた単語も出てきた。

 

www.hondanojo.com

 

 

EM農法では、微生物が入った液体肥料を畑にまくことで、土壌が肥え野菜の育ちも良くなるらしい。おまけに自然環境中に存在する微生物を使うため、幾らでも畑に撒いても良いのだとか。

 

なるほど、言ってることは分からんでもない。腸内環境も細菌の群集によって成立しており、善玉が増えれば体調改善にも繋がるとされている。善玉だけがいることが良いとは限らないのかもしれないが。

 

バイオの端くれである身分としては非常に興味深かったため、おばちゃんと色々話しこんでしまった。終いにはおばちゃんは

「これを見て!うちで作った野菜からは放射性物質が検出されないの!」

とその測定データまで見せてくれた。そこには放射性同位体のスペクトルデータと数値が記載されていた。ラボ時代に何度も見たことがある形式だ。

 

値は測定機器の検出限界1桁上を示していた。その値をどう捉えるべきかは判断ができなかったが、十分低いと言われればそうとも見える。
どこぞの畑をコントロールにしているのかは分からないが、言われれば何となく納得な話だった。

 

帰りがけにEM農法についての冊子をくれた。
「これ最後の1冊なんだけど特別ね。」
そう言って勿体ぶったような表情で渡してきた。布教活動だろうか。

 

天ぷらは普通に美味しかった。それがEM農法によるものかは分からない。
冊子を見ていて書いてあった「EM農法で農作業をすると良い菌を自然に体に取り込むことになるから、畑に行けば行くほど元気になる」という文章には度肝を抜かれた。

 

同席していた家族は「何か宗教染みてて胡散臭い」と話していた。

しかし一方で、胡散臭いものであってもおばちゃんが幸せならそれで良いではないか、とも思った。

 

何を食べるにしても、最後に決めるのは本人だ。
それが健康的、合理的なのかはあまり意味が無い。


最後は、それがその人の生活スタイルや体質にフィットすれば、それで良いということに他ならない。自分が食べたいものを食べれば、それが一番というものだ。

 

あとの問題は、個人の食を他人に強要してはくれるなよ、ということだ。
体質や生活のバッググラウンドは皆それぞれ全く異なっている。
「好きなものを食べれば良い」という言葉の本質は、「皆がそれぞれのバッググラウンドに合った食を選択する権利がある」ということでもある。

 

菜食を崇拝する人も世の中大勢いる。
しかし必ずしもそれが万人にフィットするとは限らない。
中には体質に合わず、肉食にシフトチェンジするする人もいる。
最後は他人の勧めではなく、自分で決めることが何よりらしい。

 

neem.ti-da.net

 

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世界的に食について妙なことが起きている中で

かなり話は変わるが、最近気になるネット記事を読んだ。

フランスでは完全菜食主義者による肉屋襲撃が相次いでいるらしい。
事件を起こしたのは熱心なというよりも、「狂信的な菜食主義者の中でも、特に過激な一部の人間たちによるもの」とされていたが、実際大きな問題になっている。

 

そもそも、肉を食べるにも植物を食べるにも、同じ生物を殺して食べることに変わりは無い。高等生物だけが苦しみを感じ、それ以外は殺しにならないから大丈夫といいう主張には一種の人間の驕りが垣間見える。

 

何にせよ、このように違う方向性から食の自由や安全が奪われかねないのは問題だ。

誰にだって好きなものを食べる権利があるし、それを奪うことはあってはならない。

そう思う今日この頃です。

 

www.cnn.co.jp

 

 

 

「フードテック」がフワッとしてるのでザックリ整理してみた

「フードテック」という言葉がメディアで取り上げられるようになったのはここ数年の話だが、最近その言葉の中身が非常にフワッとした言葉だと感じた。

 

そう思ったきっかけは今年の6月に開催されたAG/SUMでのこと。
自分が所属するインテグリカルチャーもブース展示をしたが、周りに自分たちのようにバイオ臭を漂わせる会社はほとんど見受けられなかった。基本的には既存の農業をどのように効率よく簡便に行うか?自動化するか?に焦点を当てたテクノロジー(ITや機械)に特化していた。

 

そもそも、メディアでは「フードテック」という言葉がどのような意味で使われているのか?以下の参考サイトでは、

IoTと融合したスマートファームやスマートキッチンも包括しており、世界中で注目を集めている技術

とされている。つまり、基本的には情報技術による食品産業の革命という文脈で囚われているのだ。

 

IoT 自体は政府が最も注目している技術分野の一つであり、実際に行われている国のプロジェクトではIoTと農業の融合は重大トピックになっている。この分野に参入する企業が増えてきたのは納得だ。

 

dxleaders.com

 

 

そんな状況を踏まえ感じたこととして、フードテックという言葉自体が様々な業種やサービス、技術を包括しているが故に、同じ言葉で説明をするには無理があるということだった。勿論、分かり易くまとまった言葉があるのであれば、メディアの立場からすれば説明が楽だ。その一方で、細胞培養による食料生産という分野を扱う立場からすると、同じ枠の中で括られるのが正しいのか?という疑問も生じる。

 

自分の脳内を整理するためにも、今のフードテックという言葉を思いつく限り分解してみようと思う。結果、フードテックに含まれる分野は大きく4つに分かれた。

 

 

  1. 既存に無い、根本的に新しい生産技術の確立を目指すもの
  2. 既存の農業や漁業に対し、技術導入により生産効率向上を目指すもの
  3. 食料の流通革命を目指すもの
  4. 消費者による食機会を提供するもの

 

 

1.既存に無い、根本的に新しい生産技術の確立を目指すもの

 この分野で今一番目立つ分野として人工肉(クリーンミート or 純肉)がある。さらに技術内容で分解すると、細胞培養肉と植物性肉の2つに分かれるが、従来の家畜のみによる食肉生産とは異なるという点で共通している。細胞による食料生産には「細胞農業」という新しいカテゴリーワードが世界的に定着し始めており、今後国内でも使用される機会が増えると思われる。

ミンチ肉を製造することは資金さえあればどうにでもなるが、現状でステーキのような厚みのある肉(筋肉組織)を作るのは不可能だ。これを達成するには、再生医療分野でも大きな壁になっている「血管新生」を誘起させ、血管を維持する技術が絶対に必要になっていく。そのような点を踏まえれば、フードテックの中でも特に「ディープテック」な分野と捉えることができる。

 

先日の細胞農業界隈でも最近になって業界地図がつくられたが、この業界だけでも多数のスタートアップや大なり小なりの事業会社が絡んできている。その中身の多くは海外だが、これから日本国内でも参入する企業が多くなり地図はさらに複雑化すると予想される。

 

jp.techcrunch.com

 

www.memphismeats.com

 

 

2.既存の農業に対し、技術導入により生産効率向上を目指すもの 

これは主にITや機器を導入することにより、持続可能な食糧生産を実現する分野とザックリ定義できる。IoTによる作物生産のベジタリア、植物工場システムのPlantxはこの分野に属している印象が強い。

 

www.vegetalia.co.jp

 

www.plantx.co.jp

 

 

生産の効率化において、別のアプローチから挑戦する企業もある。
最近知り合った会社の中で特に印象深かったのが、イエバエによる魚飼料と肥料開発を行う株式会社MUSCAだ。イエバエの幼虫が家畜動物のフンを分解して肥料を作り出し、またイエバエを乾燥させた漁業用資料は魚の成長を促す効果が期待できるらしい。
彼らとはAG/SUMの会場にてブースの隣どうしで知り合ったが、その一度で二度おいしい技術は興味深かった。

 

musca.info

 

 

3.食料の流通革命を目指すもの

食品業界では、その流通の過程で大量の食料ロスが問題となっている。また、近年度々騒がれているような産地偽装も深刻な問題とされている。
これら食品ロスを始めとする流通の無駄・情報の遮断を防ぐため、流通革命を目指した企業も出てきている。

一例として、プラネットテーブルがそれにあたる。
生産者と消費者を直接つなげるサービスによって、流通過程によるロスも少なくなり、それぞれのプレイヤー間の直接の情報のやり取りにより、信頼のある取引が確実になると予想される。

 

 

send.farm

 

 

4.消費者に対し食機会を提供するもの

そして最後のグループとして、主に消費者に対する食の機会を提供する分野だ。

KOMPEITOが行う新鮮な野菜を法人に届けるサービスは、栄養が偏りがちな社会人にとって嬉しい。オフィスでも気軽に野菜を摂る機会を得ることができる。

 

jp.techcrunch.com

 

 

オリジナルの動画コンテンツを使った事業も複数見られる。エブリーやDelyが運営する料理レシピ動画配信サービスについては誰もが良質な料理コンテンツにアクセスできるような仕組みになっている。クックパッドも料理コンテンツだが、上記2つのサービスについてはプロが制作した動画コンテンツである点が強みだ。


特にエブリーについては、今年6月のAG/SUMの会場にて、同じフロアで展示していたことは印象深かった。そこで初めて、このような動画コンテンツについても広義でのフードテックになるのだと感じた。

 

corp.every.tv

 

www.kurashiru.com

 

 

まとめ

この記事を書きながら、自分でも世のフードテックの定義の広さに驚いている。
純肉を扱う身としては、フードテックの中でも殊に「バイオフードテック(仮称)」であることを念頭に情報発信していきたい。

 

メディアもこのあたりの違いを意識した情報発信をお願いしたいものだが、中々難しいのかな?

理系+さん イベントにて登壇しました。