培養X年目の与太話

培養、与太話

細胞培養と与太話で生きてます。

培養食肉って何?なぜ作るの?

お久しぶりです、Keitaです。 連休ですね。でも仕事は継続中です、家で。 今日は僕が別の方面で関わっている技術を紹介したいと思います。 多分、この技術は20年後の世界を大きく変えていると思います。 皆さんは「培養食肉」というのをご存知でしょうか? その名の通り、肉を構成する細胞(例えば筋芽細胞)を培養して作られた人工肉です。 想像しただけでも結構エグイかもしれません。 現状のイメージとしては、細胞培養用ディッシュの中で育てて生産するようです。 dish.beef.jpg しかし世界では今まさに研究が盛んに行われている分野なんです。 これは牛肉といった特定の肉に限った話ではなく、豚肉、牛肉など幅広く応用が研究されています。 おまけに2013年にはロンドンにて試食会まで行われている。 なぜこのような研究をする必要があるのでしょうか? これには大きく分けて3つの意義がされています。 1.環境負荷への配慮 まず、牛肉にしろ豚肉にしろ育成から出荷までの環境負荷が大きいことが挙げられています。 大量の餌(穀物類)を賄う為に畑を作る。畑をつくるには森林を伐採する必要がある、という流れです。 一般に畜産業という営みには穀物栽培の30倍以上の資源(水、燃料、餌類)が必要と言われています。 また、ウシやヒツジはゲップなどにより大量の温暖化ガスを放出していることが分かっています。 これらを解決するための手法として開発されています。 2.肉の高騰(肉の需要上昇) これは特に牛肉で顕著に指摘されています。というのも、今の中国では中流階級層の人たちが増加傾向にあり、それに伴った牛肉(比較的高級な食材)の需要が高まっています。この状況に対応すべく、オーストラリア産牛肉が中国に「買い負け」するといった事態が起きています。 また今後は経済発展に伴い、更にインド(12億人)やアフリカ(11億人)が続くと予想されています。 現状でも高騰が起きている状況がさらに悪化することは十分に考えられます。 3.動物愛護と言った生命倫理 この観点は日本よりも欧米で重視されていることです。 日本にも幾つかの関連団体がありますが、欧米の団体は更に積極的に活動している様子です。 動物愛護の影響はすさまじく、食肉産業からバイオ研究まで幅広くインパクトがあります。 特に注目すべきは、愛護思想は食の思想にモロに絡むという点ですね。 ベジタリアンの中でも特に強い思想を持っている"Vegan"と言われる方々は、健康の思考以上に 「食べ物を製造する過程で動植物を傷つけている」という点から食すのを忌み嫌うことで有名です。 話が少し逸れましたが、培養食肉(またはそれを実現するための技術)はこれらの問題を解決してくれるのではと期待されています。 既にある海外の団体では、人工食肉技術を確立させた人に100万ドル以上の懸賞金を出すと表明したところもあります。(現在では募集は行っていません) 以上の食糧安定供給、倫理的な問題から、 培養食肉の必要性が高まってきている。それが社会の流れになって来ています。 と言ってもこの考えをもっているのは、まだまだ少数派ではありますが。 生体組織工学を専攻している僕にとっても非常に興味深い内容です。 議論多き技術ではあるものの、いつまでも肉料理の食文化を継承していくという点で重要な ことかもしれません。僕も焼肉や唐揚げが好きですしね。 ちぇん から揚げ.jpg