培養X年目の与太話

培養、与太話

細胞培養と与太話で生きてます。

実は天の邪鬼か

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昨年末に会社メンバーと忘年会をした。

少人数とはいえ、かれこれ1年くらいそういう集いはしてなかったから盛り上がった。

その場の流れで話題が「なんでこの会社に入ったんだっけ?」になった。

あまり他メンバーの話を聞く機会も少ないもんだから、

自分はひたすら聞くに徹する感じだった。

 

聞いてみると培養肉のテーマそのものに興味を持った、そんな話が多かった。

会社がそう言って資金調達したんだし、そうなるだろう。

ただ、それを聞いていて自分と周囲のメンバーの間での考え方のズレを感じた。

良い悪いの話ではない。

見据える方向は同じでも、違う視点でモノを見ているだけだ。

 

自分の場合、細胞でモノを作る営みそのものへの興味から今の会社にいる。

身の回りにあるモノの多くが細胞で構成されている事実に目を向けてきた。

木でできた机も家も、元々は植物細胞でできている。

本革でできたバッグは元々はウシの一部だったりする。

会社の設立当初から社員をやっていたし、

役員陣のビジョンを聞かされ続けたのもあるのだが、

本当に重要なバッググラウンドは

科学技術の進歩に貢献するのとは別にあった。

 

会社ができあがる前(だいたい6年くらい前だったと思うが)、

当時自分は培養肉を広めるためのバイオハッカー集団 Shojinmeat Project に所属していた。

そこでの活動の中で特に印象的だったのが、コミケでの評論本の頒布だった。

当時まだ培養肉という単語がほとんど認知されていなかった頃に、

培養肉の概要や意義、実際に作ってみた、の類のコンテンツを同人誌として発信した。

お世辞にもクオリティが高いとはいえない装丁

稚拙と言わざるを得ない文章や画像の使い方

それでも会場で手に取って買いに来てくれた人は多かった。

稚拙でも良いから自分のやりたいこと、

伝えたいことをカタチに表現して発信することの面白さを実感した出来事だった。

この体験は今の自分の考え方の骨組みとなって、自分を支えてくれている。

活動に参加するまでの自分は理系学生をしていたものの、

何事においてもくすぶっていて消極的な時期だったのもあり

シンプルに表現したものを他人に認めてもらう体験は自分の心に刺さった。

それからというものの、稚拙でも個人的な創作活動を続けている。

ここ2年くらい作品を発信できていないが、今後も折を見て発表したいと思っている。

 

そんな感じに創作活動がどれだけ自分の生活を充実させるかを

実感してきたし、自分の仕事のモチベーションにつながっている。

自分で作るからこそ得られる発見、成長、興味、ライフスタイル。

自分を自分で変化させていくことの楽しさを感じて生きている。

その楽しさを世間にも提供したい。

そして願わくば、それを細胞培養という全く新しいプラットフォーム技術で成し遂げたい。

会社で作っている技術は将来的に人々へ新たな創作意欲を掻き立てるきっかけになると感じている。

ある料理人は自家栽培している野菜に合う肉を創作しようとするかもしれない。

あるインテリアデザイナーは光る細胞を使った照明を考案するかもしれない。

そうやって、みんなが自分の変わるキッカケを探していくんだと思う。

技術はそのキッカケに過ぎないのかもしれない。

人が中心にいて、そこに日常的な創作活動が入ることで

起きる楽しさや価値観の転換を届けてみたい。

だからこそ、培養肉だけではなくて、

その先にある人間の営みそのものに目を向けたいと思っている。

それが自分のモチベーションを作っている。

 

しかし実際はどうだろうか?

天の邪鬼なだけかもしれない。

そんなことを考えて過ごす三連休初日

クセ強な招き猫買った

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明けましておめでとうございます。

去年末にクセの強い招き猫を買ったんですが。

Amazonで見かけた時、見た目のインパクトに惹かれてポチったやつで。

値段も¥2500 とナカナカ手軽な印象

 

注文をしてから発送されるまで2週間くらいかかった。

海外の土産らしい。

忘れた頃に届いた梱包を開いてみたら、意外とデカイ。

というか右前足の大きさが猫の体長と同じくらいで笑った。

とりあえず、いま自宅のリビングに妙な存在を放ちながら鎮座している。

これから良いことあるんだろうか?

 

 

浜辺で竜骨を見たと言える贅沢

浜辺を散歩していたときの話

浜辺に打ち上げられている竜骨を見た。

ただの流木にも見えるが、きっと龍の背骨辺りに違いない。

ヒレのように棘が等間隔に並んでいるから、そうに違いない。

 

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にしても、なぜこんな所に骨が置いてあるのか?

空を見渡すと鳶が飛んでいる。

そうか、もしかすると奴らに喰われた跡なのかもしれない。

竜の死体が波で打ち上げられて、それを鳶が啄みに来たのかも。

 

 

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ここまで書いたことは空想なのだけれども、

日常のなかでふとしたことから色々な想像するのは一種の娯楽なのだ。

見過ごしても仕方ないこと、下らないことからどうやって面白いネタを拾うか。

そんな下らなさに囲まれて過ごす贅沢があっても良い。

「あそこの会社は自分で相場を決められるんですよ」

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モノやサービスの価格について考えさせられた。

じっくり考えればアタリ前の事実なのだが、日々の生活でそれを意識することは少ない。

 

 

 

会社の転勤に伴い、この10月に引越しをした。

引越し業者の繁忙期である10月に諸々調整するのは簡単でない。

会社都合の引越しなこともあり、費用は経費負担してもらえることになった。

となると複数の引越し業者から相見積する必要があるのだが、

業者側もそのへんの事情をわきまえているらしい。

電話口で相見積をしていることを察するやいなや、

「他社よりも少しでもお安く出来るように努力します!」

とコールセンター担当員が受け答えする。

 

会社経費で落ちるとはいえ、お安くなることは嬉しい。

だけど、それとは別にモヤモヤした感覚があった。

ぶっちゃけ、それだとアンタらの給与が上がらなくないか? と。

引越し業界も大手数社を筆頭に、自営業も含めて無数の関連業者がある。

こうなると、価格競争になることは必然だ。

しかも厄介なことに、一部の業者を除けばサービスに分りやすい差が無いものだから、客からすれば最後の決め手は価格になりがちだ。

彼らはその辺りをどう考えているのだろう?

 

実際、こういう情報を見ていると普通の会社員と同等か、

それ以下の給与水準に収まっている事実もあるようだ。

それと価格競争が直接影響しているかは断定できないが、

必ずしも水準が高い業界とは思えない。

heikinnenshu.jp

「価格で惹きつけた客は、価格で逃げていく」はそのへんの事情を

わかり易く表現しているのかもしれない。

 

 

価格競争の問題には更に先があるようで、モノやサービスの相場が作られる。

身近な例を考えれば、スーパーでの野菜小売なんかもそれだろう。

毎週のように買ってる¥100の白菜が、ある日を境に¥300にされたら驚くだろう。

なぜなら普段の生活を通して「白菜はおよそこれくらいの値段だ。」と認識しているからだ。

買い物上手の人なら、別店舗で安いものを買いに行く判断をするだろう。

だから店側も野菜高騰でも起きない限りは、安めの値段設定にする他無い。

引っ越し業者も同じで、単身引っ越しでこの距離だったらおおよそこの価格帯だろうと分かってしまう。

だから、一定の価格帯の中で最も安い業者だけが選ばれることになる。

 

 

一方で、ある領域だけに特化した業者もある。

引越し業界では夜逃げ専門の業者もあった。

これは代替が利かないという意味で、強く差別化されたサービスなのだろう。

yonigeya-shinobi.com

 

 

知り合いから某IT企業の話を聞いた。

その会社は国内CtoC事業の草分けで、売上で見れば一人勝ち状態らしい。

事実、その会社の新入社員の初年度給与は¥800万からのスタートするとのことだ。

彼曰く、

「あそこの会社は自分で相場を決められるんですよ」

たしかに自分しかそのビジネスをしていないのであれば代替が利かない。

それでも客に価値を見出されるのであれば、価格を自分だけで決定できる。

さきほどのスーパーの例えに沿うのであれば、

見たことが無い海外の野菜が1個¥500で売られていれば

「これはこういうモノなのだろう」と納得してしまう。

特定の企業だけから供給されるサービスにはそんな納得感がある。

 

どこの大企業も新規事業開発に熱心なのはこれが背景かもしれない。

つまり、誰も見つけていない価値を持つサービスをして、一人勝ちがしたい。

そんなことかもしれない。

 

ベンチャーに勤める自分の場合はどうだろうか?

当たればデカイ。

まだ世界中の誰も成し遂げたことがないから。

バイオリアクターの仕事に転身した話

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※画像はイメージ

 

 

この10月から生産現場の仕事に異動した。

個人的には前向きな異動だった。

 

これまでラボの中で通常の培養しかやったことが無かったから、

大きな培養タンクを使ってるからして見える景色が全然違う。

今まで以上に培養エンジニアらしい経験とスキルが

身につくのだろうかと期待して仕事をしている。

 

異動した直後、機械や部品のことなんか無知なわけだから

"This is a tube." から入りつつ部品や機構の勉強をしたり、

現場の掃除の仕方を覚えたりとインプットが多い。

 

生産現場に近い場所で手を動かすと培養肉含めた培養技術の普及について

現実的な課題に触れることが増える。

例え理論的なコストが下がったとしても、

実際に作業がしにくい工程になると実装の妨げになる。

培養液の交換頻度が高過ぎてもユーザーの作業感を下げることになる。

当然、一般家庭に培養技術を普及させることも難しい。

人間的な動きや生活に一歩近づいた目線で過ごしている。

職場が変われば目線も変わる。

 

この経験を通して、創作のインスピレーションになると嬉しい。