培養X年目の与太話

培養、与太話

細胞培養と与太話で生きてます。

【理系研究者向け】 3Dモデルデータベースのすゝめ

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 僕は普段から研究テーマの説明用に、様々なCGを個人制作しています。
2年間作っていると、どんどんデータが溜まっていきます。
実際は上の写真の3倍はあります。

 

データを溜め込んでいくと、必要な時に直ぐに画像を出力できますし、
3D上での視点を変えれば異なる説明図画が出来上がります。

 

自分の分野に合った内容で、3Dモデルデータベースを作っていくと便利です。

 

さて、ここから完全な売り込みになりますが、
僕が所属するインテグリカルチャーのSCIGRAでは、先月から
オンラインでの科学CG講座の教材販売を始めました。3Dプリンター用の
モデルデータ作成方法を扱う第1回~2回までを無料で配布しています。

 

基本的に3DCGを全くやったことが無い人を想定しています。

 

これには、「プロ以外もある程度フリーで技術にアクセスできないと、科学CGの産業化はありえない」という考えたためです。

 

詳細は以下のページから。

 

scigra.com

 

www.dlmarket.jp


 

 

 

「おうちで培養肉じゃぱりまん」のお話

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4/29(土)のニコニコ超会議にて「おうちで純肉じゃぱりまん」が発表されました。
登壇者はShojinmeat Project 代表ハニューです。

 

 

いきなり何だ!?
と思われること必至ですが、まずは実際の発表をご覧ください。

 

www.nicovideo.jp

 

 

 

今回の発表の意図は主に以下の5つです。

  • 「生ものづくり」という概念を広めたい
  • コスト削減により、家庭での細胞培養が可能であることを伝えたい
  • 家庭で細胞培養をする場合、従来のバイオ手法とは異なるアプローチが必要という事を伝えたい
  • 純肉によって、けもフレの「優しい世界」が実現できる可能性を伝えたい(まあまあホント)
  • けもフレ第2期の設定に影響を与えたい(ウソ)

 以上優先順位が高い順です

 

 

生ものづくりという概念を広めたい

「ものづくり」といえば、機械系や電子工作のようなものをイメージするかもしれませんが、細胞によるものづくりは「生もの」を作ることを目的にしています。
バイオハックという言葉が海外で生まれてから、一般市民によるバイオ技術の実装が進んでいます。

 

日本ではバイオハッカージャパンという組織が先陣をきっています。

 

 

徹底的なコスト削減

普通に機材や試薬を揃えたら、軽く数百万掛かるので
手に入れやすいものを組み合わせることが重要です。
特に純肉培養器(インキュベーター)は完全に既存のものの
組み合わせです。一部電子工作もしています。

 

 

新たな細胞培養アプローチ

本来、細胞培養は家庭のような環境では不可能です。
というのも、いくら掃除をしてもカビや細菌が培養液に入ってしまえば
一気に細胞に影響して増えなくなってしまいます。これをコンタミと言います。
通常なら抗生物質を加えてもキツイですが、
卵白を加えることで家庭環境下でもコンタミを防ぐことができます。
どうやら卵白が万能抗生物質として利用できそうです。

 

 

そんなこんなで、今回は家庭での生ものづくりの基礎固めとなりました。
これから更に手法をブラッシュアップしていく予定です。

 

 

最後に一言

たつき監督 すいませんでした。

研究者による3Dデータ使用法の最適化と科学コミュニケーションへの応用

今回はイベントのレポートです。
3/2~3/3にて株式会社リバネスが主催する「超異分野学会」に行って来ました。
目的は研究のポスター発表をするためです。

 

リバネス「第6回 超異分野学会 600人が参加」 - フードボイス

第6回 超異分野学会 本大会 | 超異分野学会

 

 

 

発表タイトルは
「研究者による3Dデータ使用法の最適化と科学コミュニケーションへの応用」

 

研究者が3Dデータを使用することの意義を科学コミュニケーションの観点から提案し、メソッドを金銭的、時間的コストの面を最適化(最小限に)するか? 
という内容でした。

 

 

実際のポスター展示の様子です。
布印刷をやってみましたが、折り畳んで鞄にしまえる便利さに驚きました。

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そもそもなぜ3Dモデルを使うのか?

今回の発表では3Dモデル使用の3つの利点を挙げました。

 

 

1.視覚的な説明

まず、大前提として「視覚的に物事を説明できる」という利点があります。
研究者の場合、自身が行っている研究そのものを指します。
新規性のある研究であるほど、その中身を異分野の研究者、
更には一般の方々に理解して貰うことは難しくなります。

 

 

そこで、文章ではなく絵を用いて簡潔に伝えることが有利と考えられます。
ノーベル医学賞受賞者の山中先生も同じことを仰っていました。

sciencecontents.hatenablog.com

 

 

 

2.複雑な形状表現の自由

パワーポイントで説明用図画を描く際、ひたすらコピペを繰り返すなどして図を作っている例を目にします。
1つの図を描くのにも1時間以上を要するのでは?と思う位です。

 

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複雑な形状の制作は3Dの最も得意とする部分です。
元々は建築物やキャラクターなどを制作することを前提にしているため当然です。

 

 

3Dモデルの形を作る作業をモデリングと呼びますが、この作業は少し練習すれば大方のものは出来てしまいます。
特に研究者が説明用に制作するモデルには、アニメなどに出てくるような緻密さは必要ありません。
(実際に作っている様子は、以降の動画を参考にどうぞ)

 

「説明性」を重視すると、おのずとシンプルなものに仕上がっていきます。

 

 

 

3.見る角度の自由度

3Dモデルは専用ソフトに読み込むことで、立体的な説明図画を簡単に出力できます。
しかも様々な角度から見ることが出来るため、説明の際に注目して欲しい部分に合わせた絵が制作できます。

 

 

 

3Dモデルを利用するにあたっての障壁

では早速3Dソフトを使ってみよう!となりたいわけですが、
一般の研究者が参入するにはやや面倒な事情が3つあります。

 

 

1.理系の研究者向けにノウハウが体系化されていない。

基本的に3Dソフトはプロダクションで制作する、プロのクリエイター向けの仕様になっていることが多く、一般の研究者がゼロから始めるには難があります。


「説明するための3Dモデル」を作るには、無駄な技術も多くあるため
どの程度技術を習得すれば良いのかをハッキリさせる必要がありました。

 

2.ソフトウェアの併用の最適化

 一般的に3Dでの作業は複数のソフトウェアを組み合わせて行います。
これを研究者に当てはめた場合の方法を考えなくてはなりません。

 

特に分子構造といった形状は、3Dソフトでも手作業で作るには苦労します。
原子を地道に並べて行く必要があるためです。
これを普段の研究用ツールとの互換性の観点から解決する必要があります。

 

 

3.一般的に3DCGソフトは高額

 よく3Dモデリングで使用されるMayaや3ds MAXは商用利用されることを目的に開発されているため、高額です。プランによりますが、¥20~30万は下りません。
研究費を取ってくることが至上の研究者にとって、実験以外の部分に大枚をはたくのは適切ではありません。

 

 

 

 

検討してみたらこうなった

 

1.最低限の技術にまとを絞ったら・・・?

 ノウハウ最適化の検討を行う為に、この2年間Science CG塾という講座を開講しました。


ここで実際に組み立てたノウハウを現役の研究者に指導し、どのくらいの図画が創れるようになるか?どの程度のモデリングができるようになるかを調べました。

 

scigra.com

 

その結果、モデリング習得には2時間×2回の講義、
画像制作についてはプラス2時間×4回の講義にて

・画像出力(カメラの使い方)
・質感設定(立体色塗り)
・光の設定

のみを扱うだけで習得できることが分かりました。
合計12時間で大方のものが作れることになります。

 

 

実際に科学系の研究者の方に使って頂きましたが、
ポスター用の画像が30分程度で完成しました。

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2.研究用ツールとの互換性考えてみた。

研究用ツールとして、分子お絵描きソフトChemsketchやAvogadro、Jmolといったソフトウェアから3Dモデルを出力することにしました。実際に画像出力に使用するソフトに読み込む際には適宜データ形式の変換が必要になるため、変換ソフトOpen Babel GUIを使っています。 

 

www.youtube.com

 

 

 

3.無料ツールのみの使用

3Dツールとしては、無料のオープンソースソフトウェアであるBlenderの使用が
最適という結論になりました。

 

前述の研究用ツールも、全てフリーであるため余計なコストを掛ける必要が
なくなります。
研究者が直ぐにでも導入できるような制作環境が見えてきました。

www.blender.org

 

 

 

新しく見えてきた3Dモデル使用の利点 

さて、このように制作が可能になると単に
「分かり易い絵が創れる」以外の活用方法が無いか気になるところです。 

 

 

そこで、「実験の遂行」という点で更に一歩踏み込んだ検討をしてみました。

 

 

例えば、手元にこんな3Dモデルがあったとします。
光学テーブルに使う器具をイメージしました。

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これを3Dプリンターで出力すると、実際に実験器具として使用できます。
通常売っていない器具でも、3Dプリンターであれば簡単に用意ができます。
ABS樹脂を使えば、材料費も数百円で済みます。

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さらに同じモデルを使って、実際の実験イメージ図画も書くことが出来ました。

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また最近話題のVRコンテンツにも、3Dモデルは応用が効きます。

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 試作したVR映像はこちらから

Virus and red Blood cell on the hair - YouTube

 

 

 

このように3Dモデルは
「実験の遂行」「研究の発表」という両面で使用できるという結論に至りました。

 

 

今後は今回の方法を更に研究分野ごとに洗練し、研究者の方々に発信して行こうと思います。

 

 

それではまた。

 

 

 

使用した発表ポスター全体図はこちら

 

純肉(培養肉)開発をCampFireに放り込んだ件

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ある日のミーティングにて・・・

 「純肉開発のクラウドファウンディングをやろう思う」
ある日のプロジェクトミーティングで提案された計画でした。

 

ぶっちゃけたことを言えば、そもそも資金が足りな過ぎる!!!

 

 

バイオ研究は圧倒的に金が掛かる。
ちょっと試薬や器具を買うだけで¥10万なんて瞬時に飛んでいくし、
小さな機械でも¥100万単位はザラ。

 

 

Shoijinmeatはバイオハック(企業に属さない個人でのバイオ研究)で研究開発を始めている以上、企業と比べると圧倒的な資金の少なさを誇っているわけです。

 

 

研究開発における最大の課題は
「いかにして安く作るか?」です。大きな肉を作っていく際には、培養液の消費量が
多くなるため、社会実装の律速段階になると考えられます。

 

 

「安くするためにも資金が要る」という現実に矛盾を感じますが、
開発する以上仕方がないんですよね。

 

 

そんな訳で始まりました。 

そんなこともあり準備は進み、昨日3/16(木)からクラウドファンディングが始まりました。

 

なお、今回のファウンディングはファンクラブ形式でパトロンを募ることになっています。一度にドン!と資金が手に入るよりも、毎月少額でも持続的に提供して貰った方が有り難いわけですな。

 

 

とりあえず毎月100億万円入ってくれると有り難いわけです。
そうすれば実験資金に余裕ができ、メンバーもマヨネーズだけ啜って
生きる生活から解放されるわけです。

 

camp-fire.jp

 

 

 

ちなみに詳細な情報はスライドで公開しています。
・なぜ純肉が必要なのか?
・どうやって作るのか?
・なぜ日本発で推進すべきなのか?
・社会実装の過程での問題は?

などなど盛りだくさんです。
そのうちもっと増えそう。

 

www.slideshare.net

 

 

 

食糧問題解決とは別のプロジェクトの意義

このプロジェクトは、単に食糧問題を解決する以外の意味をもっています。
それは、人間の火星や月への移住計画を加速させる要素に成り得るということです。

 

現に火星への有人ミッションでも宇宙食の調達は悩ましい課題であり、
宇宙船に食糧を積んでも2年と持たないと言われています。
究極的には現地調達が望ましいわけですが、現地で牛を育て、肉を可食状態に加工することは現実的ではありません。

 

純肉は小規模なプラント内でも食肉を安定的に生産できる可能性を含んでいます。
宇宙への移住を夢見る人々からすると、これ以上にない技術に成り得ます。

 

 

 

どうぞ応援のほど、宜しくお願いします。
情報を拡散して頂ければ、我々メンバーが一方的に喜びます。

 

 

それでは、また。

「研究者の目線を持つ〇〇」という希少価値

研究者というと、どんなイメージを持つでしょうか?

「常に実験室にいる。実験と論文書きしかしない。」
といったイメージをお持ちの方もいるはずです。

 

実際、Twitterでもこんなツイートを見つけました。

 

 

 

一昔前は研究者(さらに言えば理系人間全体)は、ラボで研究・事務をするのが普通だったかもしれません。
しかし、最近ではラボでの実験以外の仕事をしている人も多くなりました。
就活サイトを見ていても、理系向けの求人にはコンサルや金融といった俗にいう文系職も増えてきました。

 

 

こうなってくると、社会における「研究者」の立ち位置を考えざるを得ません。
なぜこんな構図になっているのでしょうか?
僕個人の考えとしては、「研究者(研究職)=職業」という固定概念が定着しているためとしています。
しかし、「研究者の目線を持つ〇〇」というステータスを持ち込むと、研究者の存在意義が広まると考えています。

 

 

 

そして、もっと視野を広げれば多種多様な活動・仕事をしている人がいることに気が付くはずです。今回はそんな話を書きます。

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とある作家さんの話

 

先日、研究者である一方作家として活動をされている「森日向さん」に会う機会がありました。彼は研究員として働きつつ、主にファンタジー小説を軸に執筆をしていました。話によると、過去に科学系の小説も書いたこともあるのだとか。

 

twitter.com

 

 

科学系創作物が商業的にのるか否か?は別の話ですが、それが書けるのは
研究者+作家(クリエイター)というステータスがあってこそなわけです。
創作物については過去の記事をご参考に。

 

sciencecontents.hatenablog.com

 

 

 

とあるお笑い芸人さんの話

 

この方は科学コミュニケーションの分野で有名な方です。
吉本お笑い芸人「黒ラブ教授」さんです。科学系ネタを軸にライブなどで活躍している一方、大学で働く現役の研究者でもあります。

 

twitter.com

 

 

科学系という一聞すると敷居の高そうなネタではありますが、
それを彼は芸人トークで分かり易く伝えていきます。
こういう科学者がいるということは、是非様々な方に知って頂きたいことです。

 

 

www.youtube.com

 

 

 

とあるグラフィックデザイナーさんの話

僕がお世話になっているグラフィックデザイナーさんも元研究者でした。
特に結晶構造解析といった生物物理分野の事を把握しているため、
科学系CGに対して、正確性と芸術性の双方からアプローチができる点が大きいです。

 

 

他のグラフィックデザイナーでいうと、SCIEMENT社の瀬尾拡史社長が有名です。
この方はお医者さんですが、医学系の知識をもとに医療現場を変えることをミッションに活動しています。

www.sciement.com

 

 

 

このように、研究者の活動の幅を広げるロードランナーが出てきています。
同時に、研究者の働き方も多様化していくるのではないでしょうか?

 

 

本日の結論

「研究者」は職業じゃない、ライフスタイルだ!!!
研究者に出来ることは無限にある。

 

そんな世界をみんなで創って行こう。