培養X年目の与太話

培養、与太話

細胞培養と与太話で生きてます。

「研究者の目線を持つ〇〇」という希少価値

研究者というと、どんなイメージを持つでしょうか?

「常に実験室にいる。実験と論文書きしかしない。」
といったイメージをお持ちの方もいるはずです。

 

実際、Twitterでもこんなツイートを見つけました。

 

 

 

一昔前は研究者(さらに言えば理系人間全体)は、ラボで研究・事務をするのが普通だったかもしれません。
しかし、最近ではラボでの実験以外の仕事をしている人も多くなりました。
就活サイトを見ていても、理系向けの求人にはコンサルや金融といった俗にいう文系職も増えてきました。

 

 

こうなってくると、社会における「研究者」の立ち位置を考えざるを得ません。
なぜこんな構図になっているのでしょうか?
僕個人の考えとしては、「研究者(研究職)=職業」という固定概念が定着しているためとしています。
しかし、「研究者の目線を持つ〇〇」というステータスを持ち込むと、研究者の存在意義が広まると考えています。

 

 

 

そして、もっと視野を広げれば多種多様な活動・仕事をしている人がいることに気が付くはずです。今回はそんな話を書きます。

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とある作家さんの話

 

先日、研究者である一方作家として活動をされている「森日向さん」に会う機会がありました。彼は研究員として働きつつ、主にファンタジー小説を軸に執筆をしていました。話によると、過去に科学系の小説も書いたこともあるのだとか。

 

twitter.com

 

 

科学系創作物が商業的にのるか否か?は別の話ですが、それが書けるのは
研究者+作家(クリエイター)というステータスがあってこそなわけです。
創作物については過去の記事をご参考に。

 

sciencecontents.hatenablog.com

 

 

 

とあるお笑い芸人さんの話

 

この方は科学コミュニケーションの分野で有名な方です。
吉本お笑い芸人「黒ラブ教授」さんです。科学系ネタを軸にライブなどで活躍している一方、大学で働く現役の研究者でもあります。

 

twitter.com

 

 

科学系という一聞すると敷居の高そうなネタではありますが、
それを彼は芸人トークで分かり易く伝えていきます。
こういう科学者がいるということは、是非様々な方に知って頂きたいことです。

 

 

www.youtube.com

 

 

 

とあるグラフィックデザイナーさんの話

僕がお世話になっているグラフィックデザイナーさんも元研究者でした。
特に結晶構造解析といった生物物理分野の事を把握しているため、
科学系CGに対して、正確性と芸術性の双方からアプローチができる点が大きいです。

 

 

他のグラフィックデザイナーでいうと、SCIEMENT社の瀬尾拡史社長が有名です。
この方はお医者さんですが、医学系の知識をもとに医療現場を変えることをミッションに活動しています。

www.sciement.com

 

 

 

このように、研究者の活動の幅を広げるロードランナーが出てきています。
同時に、研究者の働き方も多様化していくるのではないでしょうか?

 

 

本日の結論

「研究者」は職業じゃない、ライフスタイルだ!!!
研究者に出来ることは無限にある。

 

そんな世界をみんなで創って行こう。

未来の食肉生産を「デザイン」で体感してみた。

 昨日行ってきました静岡文化芸術大学の有志展示会のレポートです。

場所は六本木のAXIS ギャラリー。都会の良い立地でした。
以前 Shojinmeat Project と繋がってから、一緒に活動をしているYoshitake さんの作品を見に行ってきました。

 

 

イベント | AXISビル | AXIS

 

 

卒業制作に純肉の社会実装デザインを起用してくれたのは驚きでした。
本人の話によれば、今回の作品はスペキュラティブ・デザインによって未来の食肉生産における問題提起や議論を喚起するきっかけにしたいとのことでした。

 

 

デザインというと、服や車の「見た目」を設計するということに捉えられがちではありますが、実際はどう社会に実装していくか?などといった「プロセス」や「コンセプト」もデザインの対象に挙げられます。デザインとは、僕らの生活と一体なんですね。

 

 

スペキュラティブ・デザインについてはこちらから

10plus1.jp

 

 

 

実際の展示ですが、まず目についたのは住宅で肉を生産する機械のコンセプトモデル。
塩化ビニルと厚紙で外観を造形し、中の肉は毛糸で表現しています。
実体物で見せられるという点で造形には3Dプリンターには無い良さが感じられます。

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次に食肉生産における問題提起のパネル。
論文のそっけない情報も、デザインによってここまで見やすく整理されました。
3色以上を使わないのがポイントとのことでした。

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次に実際の純肉生産プロセスの説明図。
下の円グラフの形式は初めて見ましたが、分かりやすい!
今度発表資料に使ってみようと思います。

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そして一番気になったのがこれでした。
真ん中で左右2つのグループにカテゴライズしています。
左は純肉のアクティブユーザー、左はパッシブユーザーです。
それぞれのグループの人間の思想、社会的意識、住む環境によって分類し
それぞれに相応しいされる純肉との付き合い方を提案しています。

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新規技術で世界を変えることを目的にした研究者にとって、重要な課題があります。
それは「技術だけの議論だけでは社会実装には至らない」という点です。
技術のユーザーが発生する以上、彼らの立場から最適な技術との付き合い方を提案していく必要があります。
アップル社のiPhoneはユーザー体験を突き詰めた結果とされてますが、ユーザーがどのように使い、どのように社会に浸透していくか?を提案していかなくてはなりません。
今回の作品は、それを感じさせてくれるものです。

 

 

普段はラボで実験するのみの自分とって大変良い刺激となりました。
なお、今回の作品については夏に発行する同人誌でも解説する予定です。

 

 

なお、詳細な情報はこちらから 

www.slideshare.net

 

 

「なぜ必要なのか?」「どうやって肉を作るのか?」
「それをどう社会に実装していくのか?」
など、情報発信のノウハウが溜まっていないのが純肉の業界。

 

 

今回の作品は、ノウハウの改善や方向性を考えるために大いに波及する
可能性を含んでいると言えます。

それ、本当に面白かった?? 科学技術を面白くする創作物の共通点

新しい科学技術を伝える際には、どんな方法が良いのでしょうか?
1つの方法としてマンガやアニメ、小説といった「創作物」があります。
小中学生向けの図書でも、科学技術を分かり説明してくれる漫画は多くあります。

 

 

しかし・・・・・・・・・

 

 

 

 

本当に面白いもの、印象に残るものは

どれくらいあるでしょうか?

 

 

 

科学は分かり易く伝わる。これは確かです。
しかし、そのほとんどが「単に技術を分かり易く説明する」だけで終わってしまっているような気がしてなりません。
読み手に「俺もこの技術開発に貢献したい!!」と鼓舞するような作品は非常に少なく感じます。

 

 

 

 

科学技術を伝える創作物って実際どうよ?? 

 

これを考える切っ掛けになったのが、Shojinmeat Project代表のハニューの
ツイートでした。

 

 

 

今後僕らがイメージする「細胞ものづくり」を広めていくうえで、技術の未来を伝えていくことの重要性は議論するまでもありません。 全く新しい分野なら尚更です。
多くの人達と一緒に推進させなくては実現不可能である以上、同じ未来を共有したいものです。

 

 

 

実際、創作物によっても様々な科学技術が訴求されています。
例えば以下のような例があります。実際にこれらの作品を観たのをきっかけに、
「VR研究・開発に目覚めた」
「物理学科で宇宙開発系の研究室を選んだ」
という人もいるかと思います。

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では、なぜ創作物は強い訴求力を発揮するのでしょうか?
それを考えるために、幾つか前振りになります。

 


例えばAR(拡張現実)では、PVや広告などで「これができます。あれができます」などと説明をすることが多く見受けられますが、ぶっちゃけ・・・・・

 

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「これを観ろ!!」の一言で終了します。
「電脳コイル」はAR(拡張現実)が浸透した世界を舞台にしたアニメです。
ここで重要なのは「浸透した」という部分です。
それを前提にした世界設定が与える、登場人物たちの行動や心情の動きが
あるからこそ受け手に強く訴求します。

 

宇宙開発であれば、「プラネテス」があります。
宇宙開発が進んだ世界に生きる主人公の行動を描いています。

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他にもアニメのサイコパスも絶好の資料になり得ます。
このアニメではシビュラシステムという人工知能によって確立された社会を背景に
物語が進行します。

 

技術が物語のバックグラウンドにあり、それによって登場人物たちの心情に
どのような影響を与えるか? 
この部分を生々しく描いているように感じました。だからこそ話に引き込まれる。
実際、サイコパスに影響されて人工知能を研究し始めた方も多いでしょう。

psycho-pass.com

 

 

 

さて、ここから本題です。
これらの作品に共通している点は、
「強固な世界観が成立している」ということです。
それが作品の完成度となり、最終的には技術情報としての
「拡散されやすさ、言及されやすさ」が達成されるわけです。

 

 

科学技術を伝える場合、脚本や原作者の能力もそうですが、
「科学者がどれだけコミットできるか?」
「科学者がどれだけ強固な未来の世界観を語れるか?」
にも係ってくるでしょう。

 

 

そして更に言えば、
「クリエイタ―の発想をどこまで許容できるか?」も重要な要素になると思われます。
科学者サイドは創作のノウハウを持っていないことがほとんどです。
それなのに、科学者の一方的な都合でストーリーを構築していった場合、
出来上がるのは創作物ではなく、ただの「広報物」になりかねません。

 

 

まずは伝えるべきメッセージをしっかりと決める。
それを伝える為の素材を科学者がクリエイターに提供する。
クリエイター独自の発想によって、創作物が肉付けされていく。
それによって初めて、エッジの効いた創作物になるのだと考えました。

 

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ちなみに純肉(培養肉)についてですが、小説投稿サイト「カクヨム」にて
実際にこれをテーマにしたものを見つけました。1話完結で読み易い。
この話も「純肉」が浸透した世界を舞台にストーリーが進行します。
純肉普及によって人々の価値観がどのように変わったか?
どのような新しい制度や法律ができあがったか?
研究している自分自身にも、まだ想像したことのない世界が描かれています。
いつか僕も創作物に手を出す際は、
こういう世界観をどんどん出していけたらと思います。

kakuyomu.jp

 

 

 

今回のまとめ

創作物で科学技術を語りたいなら、まずは科学者が頑張れ!!

 

 

 

 

 

 

 

最後に・・・・
「技術が普及した後の世界設定で創作物を出す」例として、こんなモノが
ありました。現状で僕がやりたいイメージに一番近かったです。

kakuyasu-sumahogakuen.com

 

 

それではまた。

Shojinmeat Projectの状況を時系列で追ってみた。~2016年総括と2017年出だし~

色々あったぜ!2016年

2017年が始まってからかれこれ2か月が過ぎようとしています。
そんなわけで去年のことを今一度振り返りつつ、今後を考えようと思いました。

 

去年の大きな動きとしては、やはり「同人誌」の執筆・頒布がありました。
これは広報の点でも仲間集めの点でも、非常に大きな効果を発揮しました。
事実、これをやったあとでネット上での培養肉の議論が多く見られるようになってます。

 

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簡単に去年のことを時系列にまとめてみました。

www.slideshare.net

 

 

今後の方針としては、
「半年に1回は同人誌新刊を頒布する」は崩さない方向でやっていこうと思います。
これはもう僕らのパーソナリティーとして確立しつつあるものであり、
これが無ければ死んだも同然レベルで考えているからです。

 

僕らが描いている夢や未来予想図は、きっと誰かの未来予想図でもあると思っています。同じ夢を共有できる仲間を増やしていくことは、今度重要な課題でしょう。

 

 

 

色々ありそうだぜ!2017年

さて、2017年ですが始まって2か月ではあるものの色々起こっています。
まず、ニコニコ技術部繋がりの人と共同で「卓上純肉製造装置」の試作機をつくることになりました。

 

アイディアよりも実物重視なので、未発達でも創っておくことにしました。
僕らの未来への妄想を加速させるきっかけにもなります。

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またこれはつい先日のことになりますが、Shojinmeat 代表の羽生が出場した
シンギュラリティ大学のピッチイベントで最優秀賞を獲得しました!!
スライドはこちらに公開されています。

 

 

www.slideshare.net

 

 

 

後日、直ぐに大会のレポート記事が投稿されていました。
またもや羽生が「年収60万 実家暮らし いない歴=年齢」というパーソナリティーを全開させていたことが分かりました。

 

出場者の中で、最も色々捨ててる感じがにじみ出ていたのが効いたらしいです。

 

homilog.hatenablog.com

 

 

そんなわけで、結構良い滑り出しを見せているShojinmeatです。
今年も「精進」していこうと思います。

 

おあとがよろしいようで。。。 

 

 

------------------------その他の関連記事はこちら---------------------------------------

twipla.jp

 

togetter.com

 

 

VR動画「火星培養食糧工場」を公開しました!!

お久しぶりです。
つい昨日のことですが、Shojinmeat が「火星培養食糧工場」の紹介動画(VR)を公開しました。

 

レンダリングにどの位掛かったのだろう?と思いつつ、未来の世界に思いを馳せることになりました。設定は西暦2200年なんですが、あと50年以内に出来ないかな?

 

 

 

VRにしろ、そうでないにしろ、動画で説明できるのは強みだと感じました。
実際、海外の純肉開発団体でも未来の様子を描けているところは少ないようなので。

 

 

そして時を同じくして、Shojinmeat Projectがアメリカの代替食糧推進NPO団体の
New Harvestのサイトで紹介されました。インタビュー記事です。

 

www.new-harvest.org

 

 

 

アメンバーが全員乙女ゲー風のイラストで紹介される異様な状態ですが、
「日本発」を意識した結果なので当然です。
腐女子の方に描いて頂きました。ありがとうございます。)

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今年中に自分の絵も出てくるんだろうか?と期待しています。
そしてその絵でクソコラ画像を作って貰えることも期待します。

 

それではまた。