Culture Square

細胞培養で自己実現できる世界を創りたいブログ。基本日々の備忘録です。

【C95出展レポ】不満から始めた小さなサークル

先日のコミックマーケット95でCulture Square としてサークル出展をした。

頒布したのは家での培養肉生産家電の実装を想定した検証 Cultural Probeと、 それについての解説本

本企画の相方はデザイナーとして活動しているTake

コミケ当日、Takeは帰省中だったのでソロ参加だった

 

 

唐突だが、今回のサークル参加は、自分だちが共通して持つ不満が発端となり突如発生したものだった

1000人に1人くらいは共感して貰えると期待しつつ、改めて想いを言語化したいと思う

 

 

 

sciencecontents.hatenablog.com

 

 

既存の未来感および未来構築からの脱却

始まりは昨年の9月終わり。

久し振りにTakeと二人で飲みながら近況報告をしているなか、こんな話になった。

 

「俺らにとってSFみたいな飛びぬけた未来感って、本当に創りたい未来と違うのでは?」 

 

これまで2年ほどの間、我々は「培養肉」に絡む発信活動を行ってきた。

培養肉により宇宙空間への移住といった華々しいほどのSFのような未来を実現できる、などというのが技術としての謳い文句になっていたし、自分自身、それが自分の見たい世界であることを心底疑わずに発信し続けていた。

 

しかし、この数か月で実際は自分の中にそういったSF的(?)未来思想が薄いことに気が付き、それが自分たちの実現したい未来なのか?という疑問に至るようになりました。

そもそも自分自身の中はSFコンテンツと馴染みがあるわけではなく、頭にそのような引き出しが無い中、どうやって未来を想像して楽しめば良いと言うのだろう?

今思い返せば、世間の流行りに引っ張られていたともいえる

 

他人の言う未来構想を聞いてワクワクするには物足りなさを感じるようになり、自らワクワクする未来を構想することに心が傾いていったのかもしれない

 

 

「個」が見えない未来感への飽きと不満

雑誌やネットニュースといったメディアでも、どこか突き抜けた記事が目立つ。

「AIが人類を滅ぼす」

「2019年の食のトレンドに培養肉?」

「宇宙への移住は近い?」

といった具合

 

「培養肉」というワードそのものに話題性があることを踏まえれば、まあ、そうなってしまうのも当然に思うのだが。

 

勿論、魅力的に見せて発信していくという姿勢自体には何も言うことは無いし、見習うべきとも感じている。

しかし、自分を含め多くの人も、来る未来として実感が湧いていないのでないか、という疑念があった。

メディアの情報はあくまでも読んで楽しむ消費コンテンツに過ぎず、世間一般が自分たちの今後について考えるきっかけにはなり得ないのでは、と。

 

もう少し正確に表現するのであれば、

ほとんどの人からすれば、培養肉が日々の日常から断絶したものとして捉えられているのではないか?と思ったわけです。

メディアの情報というのは、得てして社会全体の生活を大きく切り取ったものが多く、個の生活が見えてこないのが問題であると感じた。

 

「培養した肉が家庭でも食べれるようになる」ではなく、それによって個人の人間の生活がどのように変わるのか?を受け手が自分事のレベルでイメージすることができないのでは。そう考えた。

 

そもそもなぜ高い解像度の未来を発信したいのかといえば、技術そのものの認知度や理解度を高めることは勿論のこと、「受け取った人々それぞれが、技術を自分の生活に落とし込むイメージして貰いたい」という個人的な思いがあったかもしれない。

 「新しい技術=凄い」という一時のコンテンツに終わらせない、本当の意味で世間の認識を変えていける可能性を模索したかった、と感じた。

 

本当の社会実装のイメージは、我々がもっともっと地味なはず

なぜなら実装されて当たり前の世界では、その技術はもうキラキラしたものではないから

 

スマホという通信手段によって、確かにこの10年で人々の生活は変わったと思う。

でもその生活の変化を特別と感じるのは、ほんの一瞬で、一度当たり前になってしまえば日常はひたすら地味なものだとも感じる。

 

 

未来のプロトタイプと生活への実装

今回の企画では、とある一人の男(自分)の家に培養肉製造機がやってきた時の、生活や肉消費に対する考え方の変化を追った。

客観的な意見を得るためには第三者に頼んだ方が良いのかもしれないが、企画そのもののコンセプトを練るためにも先ずは自分で体験することにした。

 

結果については別の機会にまとめることにする。

1つだけ確実なのは、既存の肉を製造することへの執着心は消え失せ料理の主役としての役割は小さくなっていくということ。

勿論これは既存の肉だけを生産する場合であり、もっと複雑な仕様の肉を創った場合では別のことが起きるかもしれない。

 

 

下の画像はTakeがプロトタイプした家庭用培養器だ。

購入した冷蔵庫と真空保存容器をベースに、

「やや武骨な未来家具」をイメージしたディテールやギミックを施している。

今回のサークル企画の中核を担う。

 

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【昆虫食レポ】食体験と趣向アップデートの仮説

突然ですが、皆さん虫を食べたことがあるだろうか?

現在、新しい食糧危機に備えた次世代タンパク源として注目されている。

 

jp.reuters.com

 

かくいう自分も培養肉(業界名はCell-based Meat)に関わる身

自分たちの立ち位置や、今後の社会受容について考えるために、昆虫職を体験する意義があるのではないかと日ごろ考えていた。

そんな矢先、昆虫食イベントへ招待頂き、是非ともということで参加した。

 

ということで、先日初めて昆虫食を食べた体験についてレポをすると同時に、それを食生活に取り入れていくうえでの趣向について整理してみた。

 

(タイトルの「?」は、まだ確実な結論が無い話という意味。)

 

 

昆虫をご馳走になった経緯

そもそも、なぜ昆虫食を体験することになったかと言うと、以前からお知り合いの昆虫食料理研究家である内山昭一さんに試食ワークショップへお誘い頂いたことがきっかけだった。

彼は日本での昆虫食の界隈では有名な方で、昆虫文化、様々な料理への活用方法についても造詣が深い方

また自分と同様、食の文化を増やそうと活動されている人間の一人であったため、是非ともその活動を深く知りたいという思いもあった。

 

 

昆虫の味を堪能するため当日は昼飯を抜いていった。

 

 

 

感想:単純に旨い。料理としての活用の幅は広い。

阿佐ヶ谷にあるとある喫茶店会場に着くと、メニューを渡された。

店の外ではフライパンで何かを炒めている。あまり見ないようにした。

 

 

ちなみに当日のメニューは次のような感じ

  1. セミ成虫3種雌雄食べ比べセット(乾燥して粉末にしたアプラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミ
  2. セミ幼虫の素揚げ
  3. モンスズメバチ幼虫のバター炒め
  4. キイロスズメバチ幼虫甘露煮のせコオロギパスタ
  5. コオロギ粉クッキー
  6. ドライコオロギせんべい
  7. 女王ハキリアリの乾物
  8. スズメバチ成虫のキャラメリゼ

よくこんなにも昆虫で料理が出来上がるものだと思った。
以下食べた料理の写真と感想を並べる。

 

 

1.セミ成虫3種雌雄食べ比べセット(写真は撮り忘れた)

味は淡泊の極み。加えて香ばしい。

粉になっていたが、香りはややレタスなど葉物野菜に近い。

お好み焼きの薬味とかに使えそうな印象。

興味深かったのはセミの種や、雄雌で微妙に味に変化があること

セミの粉は、やや旨味が強い感じだった。

もう少し明確に味の違いが出るのであれば、雄雌両方を使った料理の中で味の緩急をつけられるかもしれないと妄想膨らむ。

 

 

2.セミ幼虫の素揚げ

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当日、食べる時に最も抵抗感を感じたもの。

だけど1個食べれば何個でも食べれる。食感はだいたいエビ。

身はエビよりも少ないが、腹の部分はエビよりも柔らかく脂質的な味

聞くところによると、土の中で過ごすセミの幼虫は胸についた脚を使って土をかき分けて動いているため、胸は繊維質が多く、腹は脂質系に富むらしい。

脂ではあるが、全くしつこくない。

昆虫が低脂質高たんぱくと言われる所以はこれかもしれない。

 

 

 

3.モンスズメバチのバター炒め

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今回の試食会で一番美味しかったもの

バター醤油という人類最高の味付けもあるが、材料の蛹自体が柔らかくトロに近い味だったのも美味しさの原因かもしれない。

昆虫そのものの美味しさと、調理方法が適合している印象

内山氏いわく、蛹になりたてくらいが一番旨いらしい。

 

 ※「バター醤油でならコンクリートでも食える」と豪語していた某漫画のキャラクターを思い出す

 

 

4.キイロスズメバチ幼虫甘露煮のせコオロギパスタ

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幼虫(蛹)は鶏レバーに近い味だった。

甘露煮のあまじょっぱい味付けによく合う。

動物の食べたものが体内に残っていることがレバー味につながっているらしい。

パスタは淡泊で健康的な印象。コオロギの味かどうかは粉では分からない。

やはり昆虫の風味はそのままが一番良さそうだ。

コオロギパスタはタイでは一般的に流通しているものらしく、主食に向いている様子

単体だと味気ないが、甘露煮など濃い味の惣菜との組み合わせが良い点は、白米と同様

 

 

5.コオロギ粉クッキー(写真撮り忘れた)、ドライコオロギせんべい

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 これもパスタと同様、淡泊な味わい

昆虫の味を体験してもらうためか、薄味で砂糖や塩を入れていた。

 

 

7.女王ハキリアリの乾物(写真取り忘れた)

 内山氏が本イベントで最もレアな昆虫であると言い切るハキリアリの乾物

米原産のアリで、巣の中でキノコを栽培する習性から「農業をするアリ」として有名

 

女王バチは胸と腹で食感が大きく異なる。胸部分はあっさりしているが、腹の部分は大きく膨らみ 、身がぎっしりしている。

味の緩急から思いつくものといえば、「たい焼きのしっぽ」のようなイメージか

 

ありんこ日記 AntRoom:南米ペルー調査 その13 ハキリアリの菌園観察

ハキリアリ - Wikipedia

 

 

8.スズメバチ成虫のキャラメリゼ

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 イベントのデザート

味はキャラメルポップコーンに近い。

昆虫であることを忘れるほど、スナック感覚で食べることができる一品

 

 

 

食料の趣向は「分岐」と「段階」の組み合わせで説明できる?

 まずはイベント参加した後の率直な感想を整理した。 

 

(体験してみての感想)

  1. 昆虫食そのものは十分な味と料理との相性が期待できる。
  2. 1つ食べれば、2つめの抵抗感はない。
  3. セミを食べれる=どの虫でも食べれる、ということではなさそう。

 

もう少し深堀りしてみます。昆虫食の趣向というのは、大きく分けて

  • どの種類の好きになるか?という趣向の「分岐」
  • ある種類の虫をどのくらい好きになるか? という趣向の「段階」

の2要素の組み合わせで考えることができる、というのが自分の仮説だ。

 

(1)昆虫食意識の「分岐」

まず分岐についてですが、ここではどの種類の虫を好きになるか?という観点で考えてみる。

身近な昆虫を幾つか挙げてみると、アリ、セミ、バッタ、コオロギ、キブリ、ムカデ(厳密には昆虫ではない)、カイコがある。

またそれらの昆虫は全て、卵、幼虫、(蛹)、成虫といった形態のステージが存在する。

アリを食べれるがセミには嫌悪感を示すといった状況、同じアリでも特定の種類のアリが特に好き(嫌い)という趣向の可能性を考慮すると、以下の図のような趣向の分岐ができあがると考えられる。

 

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さらに分岐させるのであれば、「体色」「臭い」「オオクワガタか?コクワガタか?など虫の種類」といったパラメータを追加していくこともできるだろう。

 

 

 (2)昆虫食意識の「段階」

次に趣向の「段階」について考えてみる。イベントで食べたのは大きくても小指程度の小さな昆虫だった。

1つ食べてみると、2個目のハードルが低い。2個食べると3個以降はポテチ感覚という風にハードルが低くなっていることを感じた。

一方で、この状態から突然大きな虫(例えば20㎝サイズの何か)が食べられるかというと疑問がある。

ある昆虫を食べれても、その種類の全ての昆虫が食べれるわけではなく、大きなサイズを食すにはまた別の心理的な障壁がありそう、という感触だ。

これを整理すると以下の図のようになる。

 

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また別の観点でいえば、 小さな虫を食べれても、それが大皿山盛りの状態で食べたいかという量による心理的障壁もあり得る。

 

 

食趣向は個人の体験でいくらでも変わりそう。問題は入り口

イベント中、開場でご一緒した親子連れから興味深い話が聞くことができた。

「子供は去年から昆虫食を体験し続けている。今では虫の味を覚えてしまって、アリの中でも、どのアリの種類が美味しいとかまで言い出している」

この話を踏まえると、食料への意識とは生きている国の文化よりも、個人の食体験に依存する部分の方が大きいかもしれない。

事実、自分と比較して「何でそんなもの食べるの?そんな食べ方するの?」という食趣向を持つ人は沢山いる。

 

一般的に嫌悪感の対象となりやすい昆虫食であるが、食の嫌悪感は必ずしも昆虫だけに適用される訳ではない。

例えば寿司屋で出されるホヤ貝も、その見た目や食感で嫌悪感を示す人もいる。

食意識を形成は非常に複雑なものであり、このブログ記事だけで全てを語るのは到底不可能だ。

ただ、それは個人の中である程度意識形成のプロセスが完結する気もしてきた。

 

 

 さて、培養肉についてはどうだろうか?

これについては更に整理が必要なので、次回以降に書こうと思う。

整理したいことは山ほどある。

 

 

 

参考図書

昆虫食入門 (平凡社新書)

昆虫食入門 (平凡社新書)

 

  

 

余談ですが、昆虫食についてこんな記事を思い出しました。

mainichi.jp